●小説の原稿の校正。ここまでこぎ着ければ掲載されるでしょう。来月発売予定の雑誌に載るはず。小説を発表できるのは8年ぶりか9年ぶりくらい。前に発表した四つの短編群のつづき(というか、それぞれ自律しているがシリーズとして同じ)で、今回も原稿用紙換算で三十数枚の短いものです。
この小説には「ペル」という固有名を刻みたかった。子供の頃に家で飼っていた犬だが、記憶は茫洋としている。ただ、ペルがいなくなった(死んだ)ときにすごく悲しかったというのが、最も古い記憶の一つで、生まれて初めて感じた強い悲しみだったかもしれない(悲しみというより「理不尽だ」という感情に近かったと思う)。
そのペルのこと(ベルを失った悲しみのことではない)と、昔から近所にあって、長い間荒れ果てたまま放置されていた、古くて立派な日本家屋のある広い敷地(子供の頃はちゃんと人が住んでいたはずだが、いつの間にか荒れ果てていて、いつから荒れ果てたのか憶えていない)が、ある日とつぜん更地になっていた、ということについて書いた(「ついて」というか、それらがモチーフとなった)。気持ちをできる限り素直に表現しようとした結果として、まったく素直ではない形式の小説になっています。