●大江健三郎が亡くなった。
大江健三郎にかんしては、デビュー時から時代の寵児であり、ノーベル文学賞を受賞するまでの大作家となり、数多くの大江論も存在し、とても有名な存在であるにもかかわらず、(後期の擬似的私小説形式の作品が特にそうだと思うが)実はちゃんと読まれていないのではないかという思いがある。あの擬似的私小説形式の何がすごいのかが充分には理解されているように思えない。
(2011年にあった「日中韓 大江小説読み比べ」というシンポジウムで一度だけお目にかかったことがある。そのときの控え室で、コピーした原稿用紙を何重にも切り貼りしたものの上に、赤いサインペンでさらに直しを入れている姿を実際に目にすることかできた。)
●『人はある日とつぜん小説家になる』(青土社)という本に収録されている「死を置き換える/『臈たしアナベル・リイ 総毛立ちつ身まかりつ』論」を、期間限定(三月いっぱい)で公開します。『臈たしアナベル・リイ 総毛立ちつ身まかりつ』という小説は、現在では『美しいアナベル・リイ』と改題されているし、ぼくがこの論考を書いた時点のバージョンから、現在出ている本ではおそらく改稿もされてもいると思いますが。