電車の窓から。
山を強引に切り崩してつくった造成地。まだ住宅は全く建っていなくて、住宅用のやや道路から盛り上がった平らな細かく分けられた平面が幾つもずっとつづいている。その一角に、木を植えるのか、それとも元々そこにあった木を別の場所へ移すためなのか、地面にぽっかりと大きな穴が空けられ、その脇に大きな一本の木が、根っこごと掘り出され、根の部分が麦藁のようなもので丁寧に保護されて、ごろん、と、ころがっていた。
辺りにほとんど家はなく、ただ、住宅用に均された地面だけがずっと拡がっているその一帯の隅の方に、なぜだか、公園だけがぽつんと、早々出来上がってしまっている。今のところ多分誰も使わないだろう公園。砂場、ブランコ、ジャングルジム、ベンチ。
メジロの鳴く声がやたらと響く、春のあたたかく晴れた日。
家から踏み切りを渡った向こう側にある大きな病院の敷地のなかの桜の花は、もう7割ちかく散ってしまっている。