●乾燥した落ち葉に覆われた雑木林の土も、少し掘り起こせばしっとりしていて、ヘルメットにニッカポッカの男たちが作業している近くを通りかかると、湿ってすえたような土の匂いがたちこめている。建物の裏手の庭と雑木林の間を縫ってつづく遊歩道には、清掃業者が集めた落ち葉でパンパンに膨れたビニール袋が点々と置いてある。業者がかわったのだろうか、たしか以前は、竹で編まれた柳行李を大きく深くしたような容れ物に落ち葉がみっしりとため込まれ、その容れ物に着いている紐を、リヤカーのように業者のおっさんが引っ張って移動させていたのだったが。(夏には、刈り取られた雑草が麻袋に詰め込まれていくつも集めて置かれ、くらくらするほどの青い匂いを放っていた。)日が強く、ぽかぽかした陽気だが、日向と日陰の差が激しく、極端なことを言えば、ひなたを歩いていても身体の日の当たっている側面は暖かいが、反対の側面は寒いという感じだ。常緑樹の葉の緑も何となく勢いを失っているように見えるなか、ヤマモモの木は真夏とあまり変わらず、しゃきっと粒立った濃い緑の葉をぎっしりとつけている。
●日が傾き、空はまだ明るいが、周囲は薄暗くなったような時間に、傾いた日を背にして建つ建物と、夕日の方を向いて建つ建物の両方が見える場所に立っていた。一方の建物の全面は影になり、びっしりと並ぶ窓のいくつもに蛍光灯が灯っているのが見え、もう一方の建物の窓々のガラスには夕日が眩しく反射していた。