●雨のなか、土日でも窓口が開いている郵便局まで傘をさして行く。久しぶりに通る道。急な階段を下り、大きくカーブする比較的広い道から、蛇行する狭い小道に入る。湿った地面。鈍い光のなか、空き地の生えるまだ枯れた草が黄金色のように輝いて見える。そこに立っている交通標識の白いポールに浮き出ている錆び。掲示板に貼ってある紙が湿って、くしゃっとしている。盛り上がった土の斜面に、その前に建つ家に倒れかかりそうな角度で木が茂っている。家庭菜園のような小さな面積の畑に、ちょっこちょこっと植えてある野菜の黄緑色が鮮やかにみえる。土のにおいがする。青いビニールシート、赤と白のポリタンク、青いトタンの小屋。この道よりさらに細い、生け垣に挟まれた脇道があり、そこを郵便配達のバイクがブーンとうなって上ってゆく。郵便局員の肩が生け垣に当たって葉を揺らす、のを見ているが、そこは曲がらずに、まっすぐ進む。自動販売機の光がまぶしい。「FIRE HYDRANT 消火栓」と書かれた丸い看板の赤がいい感じに褪せていて、その上雨で濡れて、とてもうつくしい色になって目に焼き付く。
●一旦帰ってから喫茶店へ行って読書。喫茶店から帰ってDVDを二本観る。どちらも、書くべき原稿と関係している。20から25枚くらいの原稿二つ、21日のトーク、ゲラの直し、ぼくにとってはいっぱいいっぱいの仕事量で、原稿関係ではない本を読んだりすることがなかなか出来ない。とはいえ、これでは経済的にまったく足りないのだが。(絵を描くことは、これらの「仕事」とはまたちょっと別の意味での『仕事』だ。)
●夕方、買い物に出たら、雨が上がっていてとても気持ちのいい感じだったので、普通に行けば十分ちょっとで着くスーパーまで、回り道して1時間かけて行く。雨上がりで澄んだ空に、雲がもくもくとうねっている。そこに夕日のオレンジが反射している。駐車場の砂利に出来た濁った水たまりに空と雲が映る。濁った水面に映る澄んだ大気の色(濁った色同士の澄んだ響きを描きたいとぼくはいつも思っているのだが)。ぐんぐんと暗くなってゆく。目は、暗くなるのに慣れるのだが、歩きながらところどころでデジカメで写真を撮って、それを連続してモニターで見てみると、暗くなる速度がすごく急なことに驚く。肉眼では、空は明るく地上は薄暗い、という感じから、空もどんどん暗くなってゆき、そのうちいつの間にか、街灯や家の明かりを眩しく感じているという風に、ゆっくりとした変化が見える。どちらにしても、スーパーに着くころには、すっかり暗くなっている。
●夜から夜中にかけて、またDVDを観る。この映画作家について書くのは困難だとつくづく感じ、途方に暮れる。