●近所のTSUTAYAでは、まるで輸入盤CDみたいに、売れ残ったDVD(レンタルで使用したものではなく新品)を980円という値段で売っていたりするのだが、これって流通的にはどうなっているのだろうか。DVDというのは委託販売じゃなくて買い取りなのだろうか。(もしかしたら、TSUTAYAで売れ残ったものではなく、一度返品されたものをソフト販売会社から安く買い取って、権利が切れる前に叩き売ってしまえということなのだろうか。)ジョン・カーペンターの『光る眼』とかヴィム・ヴェンダースの『パリ・テキサス』とかエドワード・ヤンの『ヤンヤン・夏の想い出』とかジョン・フォードの『わが谷は緑なりき』とかレオス・カラックスの『Pola X』とか、目についたのを何枚か購入するのだが、普段DVDソフトの値段はちょっと高すぎると思ってはいるものの、さすがに980円で買ってしまうのは申し訳ないような気がする。(たんに「消費者」としてだけ考えれば、多くの作品を少しでも安く観られるのは良いことなのだが、しかし、この世界でたんに消費者としてだけ存在することなど誰にも出来ない。)フォードの映画などは古典的な名作なのだから無料で配布しても良いくらいだとは思うのだが、エドワード・ヤンの最新作までがこんなに暴落してしまうとしたら、それこそ「大量消費」されるような作品でないと、映画作家が資金を集めたり、映画関係者が多少でも潤ったりするのって、ますます大変なことになってしまうのではないだろうか。(『ヤンヤン・夏の想い出』はまさに、『恋愛時代』や『カップルズ』で描かれたバブリーな時代とはうってかわった、台湾経済の厳しい状況を描いてもいる訳だ。ちなみに、青山真治の『月の砂漠』は、この『ヤンヤン・夏の想い出』の設定をそのまま頂いちゃっているのだと思う。)複製技術が発達すればするほど、複製芸術の作品の単価は下がり、「量」を売らなければ利益が出なくなる。ぼくは映画関係者ではないので詳しいところは全く分からないが、単純に考えても、ソフト会社にあらかじめ権利を売ることで得られる資金もあまりあてに出来なくなるだろう。(そのような状況に対して、例えばDVなどを使って製作の体制をコンパクトにして「安く」つくるという実験などは、多くの作家によってなされてはいるのだろうが。)それともたんにこの現象は、ソフト会社が「売れる」枚数の計算をあやまって、ソフトを大量に流通させすぎた結果だというだけのことかもしれないけど。
(別にぼくは、「著作権」とか「知的所有権」とかが大事だという話をしているのではない。ただ、経済的な規模として「マイナーな」映画作家や、製作会社、配給会社などは、これからますます困難な状況を強いられるのだろうなあ、たいへんだなあ、という話でしかない。一方で、違法コピーみたいなものはどんどん出回った方がいいとさえ思ってもいるし、TSUTAYAのような大型のチェーン店でしか「安売り」が出来ないことの方が問題なのだとも思う。)