03/12/17

寒い朝、大きくて重たい鞄を肩から掛けて、足を出すたびに揺れるその鞄の揺れにもてあそばれるように、早足で駅へと向かう。少し先の信号が青になったのが見えたので、両手で鞄をがっしりと抱えて走り出そうとしたその瞬間に、近くの家から味噌汁(多分わかめ)の匂いが漂ってきた。ドタドタと走り、何とか信号が赤になる前に渉り切ることができた。走っている時は、上着が擦れる音で気づかなかったのだが、渡り切って足を止めると、バラバラ、バラバラ、と不思議な音がしている。しばらくして、空からミゾレというのか、小さな氷の粒が落ちてきているのが分かり、音はその氷の粒が木の葉に当たってたてる音だと分かる。ミゾレの降りはみるみる強くなり、上着の肩や鞄に積もるほどになるのだが、傘を持って出ればよかったなあ、と思うくらいになったところで唐突にあがる。ミゾレがあがると、重たく厚い雲に被われていた空に裂け目が開き、拡がり、雲が散り散りに散ってゆき、あっという間に青い空がのぞいて、その面積を広げた。雲の切れ目から、バラバラバラバラという振動音が響いて、青い空を背景に軍用のヘリコプターが姿をみせる。