●昼間、部屋で、うつらうつら眠っていたぼくの頭のなかに、アパートの前に敷かれた砂利に車のタイアが乗り上げる音がすうっとかき分けるように侵入してくる。それで目が覚めるわけではない。半ば眠ったままの状態で、自分の部屋の前あたりに車が停まり、ドアが開いて人が降りているのを感じている。その車は人をおろすと、再びゆっくりと動き出し、アパートの裏手にある駐車場へと移動してゆくのが、砂利を踏むタイヤの音がアパートのまわりをぐるっと回っていることから分かるのだった。半ば眠りのなかに居たままで、アパートのまわりを車が動いて行くのを感じているぼくは、同時に、横たわっている自分の左脚が、不自然で無理がある姿勢で曲がっているのを感じていて、その動きで目が覚めてしまわないように注意しながらゆっくりと体勢をかえてから、また、眠りの方へと向かって降りて行くのだった。とは言っても、それほど深い眠りではないが。(だからこそ、目が覚めた後も、このことを憶えていたのだった。)