エアコンの室外機を巨大にしたような...

●エアコンの室外機を巨大にしたような機械がうなりながら駆動している。他にも、太いのやら細いのやら、様々な管が縦横にはしり、所々にバルブやらメーターやらがついていて、それらがいくつかの箱状の機械に接続されていて、ゴーゴーと音をたてている。狭い室内に押し込められたいくつもの機械が駆動する熱で、室温が極めて高い状態で、その熱せられた空気を逃がすために開けっ放しになっている、外へと向けた扉のところにもまた、床に置かれた換気扇の化け物みたいな機械のファンが(空気を入れ替えるために)廻っていて、重たい空気を微かにかき回している。ゴテゴテした機械とそれが発する熱でぎっしりと満たされた機械室を抜け、外へと通じる扉を出ると、そこは屋上で、広い平面が開けている。空は雲で塞がり、その雲は、地上のライトやらネオンやらの光が反射してぼんやりと光っている。靄がかかったようなそのぼんやりとした光と、ねっとりと湿った動きのない空気が、屋上の広い平面に広がっている。
広い平面とはいうものの、屋上への出口の付近は物が乱雑に置かれている。ドアの閾を跨ぐと、その左右には、大雨の時のための土嚢が、薄汚れ、ひしゃげた形で積み上げられているし、その脇には、折り畳まれた段ボール箱の束が、日光で変色し、雨水による染みもついて、ある。同じ並びに、水道の蛇口と流しがあり、何本も張られた針金にたくさんの雑巾が干されている。大小様々な、青かったり黄色かったりピンクだったりするプラスチック製のバケツが、いくつも重ねられ(大きいもののなかに中くらいのもの、そのなかにさらに小さいもの、という風に)、何十個も並べられ、もっと大きな金属製の缶には、モップやらブラシやら竹箒やらが刺さっている。(プラスチック製の小さいバケツのいくつかには、土が入れられ、発育の悪い植物が植えられてたりもする。)反対側の隅には、何か大きな物、大型の自動車くらいの大きさの何ものかに、青いビニールシートが被せられている。
屋上の広い平面が広がっている方へ進むと、正面に、巨大な(建物三階分くらいはある)向かいのビルの屋上に設置されたパチンコ屋のネオンが視界を塞ぐ。赤地に黄色い文字で「パチンコ」、そして白い文字で店の名前が記されたそのネオンが、派手に、激しく、一定のリズムを崩さずに、点滅している。足下には、どこからか洩れ出して流れてきた液体が広がり、大きな水溜まりが出来ていて、その水面が、ネオンの光を反射し、容赦のない点滅を反復している。屋上への出口から2、30メートル離れた金網の付近まで行っても、機械室の機械が発する音が鈍い振動のように響いている。遠くから、電車が通り過ぎる音が聴こえてくる。