ポール・トーマス・アンダーソン『ハードエイト』をDVDで

●『ハードエイト』をDVDで。この映画は、『マグノリア』や『パンチドランク・ラブ』のポール・トーマス・アンダーソンのデビュー作なのだけど、『パンチドランク・ラブ』よりもいいんじゃないかというくらい良い。ただ、この映画への不満は、こんなにきれいに終わっていいのか。ここで終わりにしていいのか、ということで、だいたいこの映画は、ちょっと「決め」過ぎではないかと思うくらいにきれいに「決まって」いて、それがこの監督の並外れた才能を示していると思うのだけど、そういう映画がここまで切れ味鋭い終わり方で終わっていると、逆に、何か煙に巻かれたような、華麗な手つきで誤摩化されたような感じがしてしまう。(ラストのショットなんて、本当に素晴らしいのだけど。)この映画の「物語」は、ここからやっと始まるのではないか、というところでぷっつりと切られてしまうので、完璧なプロローグだけを観せられたという感じなのだった。まあ、低予算で、これ以上長い映画はつくれなかったのだろうし、デビュー作で、まさに、これから始まるわけだから、これはこれでよいのだろう。観客としては、状況がよく掴めない状態のままで、映画の魅力的な流れにいつの間にかすっかり乗せられているのだけど(登場人物の「行為」が常に先行し、その意味は何歩か遅れてやっと理解できる、という風に物語は進む)、フィリップ・ベイカー・ホールが、サミュエル・L・ジャクソンの部屋に侵入するあたりで流れが少々性急な感じで乱れて(つまり、そこではじめて「先」が読めてしまって)、ちょっと強引に物語を(ある種の「典型」に落とし込むことで)「終わらせにかかっている」というが感じがみえてしまうのが、惜しいと思う。