●テレビに楳図かずおが出ているのを観た。楳図氏は、子供の頃、読んだマンガに影響されて海賊になりたかったのだが、船酔いをする体質であることが分ったために、すぐにそれをあきらめざるをえなかった、と話していた。で、トレードマークとも言えるあの赤と白のボーダーのシャツは、その海賊の衣装なのだ、と。あれってそういうことだったのかと驚くとともに、それを聞いて、子供の頃の欲望が、ずっと、そういう形へ変換されて、生ものとして保存されているのって、凄いことだと、改めて楳図氏の偉大さを感じた。ボーダーのシャツは、キャラを強調する(自らのアイデンティティを他者に向けて示す)とかいうのではなく、そういう内在する欲望の一貫した流れによるものなのだった。(子供の頃に読んだ海賊が出て来るマンガというのは、やはり『新宝島』のことなのだろうか。)
●今は、住んでいるところとアトリエは一緒なのだが、以前は、アトリエを別に借りていて、そのアトリエへと向かう道の途中に、楳図氏の、外観の全てが派手な黄色で塗り込められた自宅があった。庭に置いてあるスクーターも黄色だった。(楳図氏の自宅の向かいと言ってよいところにある中学の敷地には、真夏までしおれることなく鮮やかに咲き続ける不思議な紫陽花の株があった。)夜遅くに、アトリエから帰るときに、スタジオから自宅へと帰って来る楳図氏とすれ違うことも、度々あった。(楳図氏は、帰宅すると家中の灯りを煌煌とつけ、しかもカーテンをひいたりもしないので、家の前を通りかかるだけで中の様子が丸見えで、たまに、モノが雑然と並んだリビングでくつろぐ楳図氏の姿を、通りがかりに横目でチラッと見てしまうこともあった。)それはもう五年くらい前の話で、その頃にお見かけした姿と比べると、テレビに映った楳図氏は、随分と老けてしまわれたという印象だった。
●今日の風景http://www008.upp.so-net.ne.jp/wildlife/fuukei.html