●どうでもいい話。奥田瑛二が映画をつくって、それがどこかの映画祭でグランプリになったという話題を、朝のワイドショーが報じていた。その映画は奥田氏の家族ぐるみでつくったものらしく、脚本も、家族で共同で書かれたそうだ。で、脚本家のクレジットは「桃山さくら」となっているのだけど、それは、長女が桃子で、次女がサクラというので、それをたんじゅんに合わせると「さくらももこ」になってしまって、『ちびまる子ちゃん』の漫画家と同じになってしまってまずいので、そこに「山の神」を足して、桃山さくらにした、と、安藤和津の隣に立って、奥田氏が喋っていた。「山の神(奥さんのこと)」という言い方を、書き言葉としてでなく、話し言葉として、実際に人が喋っているところを、ぼくは生まれて初めて見て、あ、本当に「山の神」なんて言い方をする人がいるんだ、と思ったのだった。たまたま昨日、夏目漱石の『彼岸過迄』を読んでいて、「山神の祟りには実際恐れを作していたんですからね」とか「山の神の漢語じゃありませんか」という表現を読んで、さらっと読んだだけではその意味がピンとこなかったということがあっただけに、奥田氏の言葉が印象に引っかかったのだった。