07/12/18

●リンチ論を書いていて、細部を確認するために『マルホランド・ドライブ』のDVDを借りてきて観たら、ついつい惹き込まれてずっと観てしまった。ぼくにとって今年はまさにリンチの年で(そのきっかけは樫村晴香さんにお会いしたことによるのだけど)、リンチの何本もの映画を何度も繰り返し観た。それは別に、リンチ論を書こうと思って観たのではなくただ面白くて観たのであって、リンチを繰り返し観た結果として、リンチ論を書いているわけなのだった。
とはいえ、初期のリンチは、ぼくには今でもあまり面白くない。『エレファントマン』と『デューン 砂の惑星』はまったく面白いと思えないし、『イレイザーヘッド』も、主人公の頭かぽろりととれてしまって世界が反転する短いエピソード以外は、あまり面白くない。『ブルーベルベット』でさえ、人が言うほどいいとは思わない。(だからこれらの映画は「何度も繰り返し」ては観ていない。)ぼくにとってリンチは『ワイルド・アット・ハート』でいきなり面白くなり、『ロスト・ハイウェイ』でようやく映画作家デイヴィッド・リンチ」となる遅咲きの(努力と持続の)作家なのだ。そしておそらく、リンチがリンチとなるためには小説家・脚本家であるバリー・ギフォード(『ワイルド・アット・ハート』の原作者で『ロスト・ハイウェイ』の脚本の共同執筆者)の力の作用が必要だった。ただ、『ナイト・ピープル』というリンチのドキュメンタリーを観ると、二人の共同での脚本執筆の時の関係は、あまり良好ではなかった感じが匂ってくるのだが。
●リンチ論が、とうとう『インランド・エンパイア』の部分にさしかかるので緊張する。