●最近出た、フーコーの『マネの絵画』(筑摩書房)の、フーコーの講演の部分だけ読んだ。きわめて常識的なフォーマリスティックな分析に終始していて、しかもその分析も、それほど切れ味鋭く、深く切り込んでいるというわけでもなく、こういう分析なら何もフーコーでなくても、例えば藤枝晃雄の本を読んだ方がずっと面白いと思ってしまうようなもので、正直、拍子抜けという感じ。(もし、このフーコーの講演を読んで面白いと思った人がいたら、ぜひ藤枝晃雄の『絵画論の現在』とかも読んでみていただきたい。ただし、文章に独特のクセがあることを覚悟した上で。)この講演をもって「フーコーのマネ論」みたいに押し出すのはどうかと思う。まあ、この本の読みどころはむしろ、第二部以降のシンポジウムの部分なのかもしれないけど。しかし、さすがにフーコーで、マネの絵画の意味をとても要領よく、コンパクトで明解にまとめてはいて(とはいえ、美術家としてはその明解さによって切り捨てられた部分こそが重要ではないのかとも思うわけなのだが、まあ、それは当然なので仕方ないのだが)、美大の学部の学生向けの講義とか、カルチャーセンターでの上級者向けの講座とかのテキストとしては、これ以上のものはないんじゃないかとも思う。