●『怪奇大家族』5話から8話をDVDで。7話と8話(7怪と8怪)があまりに面白くておどろいた。こんなに面白いドラマを、深夜ひっそりやっていたなんて。こういうのは、出来ればDVDじゃなくて、深夜になんとなく点けたテレビで、予備知識とか無しで偶然見つけて、「なんだこれは!」みたいな出会い方をしたかった。
無縁仏の死者は幽霊になっても霊界での地位が低く、皆からさげすまれるので、それならいっそ幽霊になどならずに死体のままでいようとするあぶれ者たちがいて、そのようなあぶれ者たちをあつめて、あぶれ者たちの居場所としてスナック「まあ冥土」を経営する、アウトローで、死体たちから兄貴と慕われるメメント森という人物(じゃなくて死体)がいる。「まあ冥土」には夜な夜な死体愛好者たちが客として訪れる。しかし霊界ではメメント森の存在を疎ましく思っていて、つぎつぎと刺客を送って来る。
という風に8話のあらすじを書いてもおそらく面白さは全然つたわらないのだが、とにかくこれは脚本のレベルで凄く面白い。霊界における幽霊の階層があり、その階層秩序に反するアウトローとして、生者でも幽霊でもない「物としての死体」という非公式的な位置があって、そしてそのような、本来あってはならない「意思をもった死体」たちに対して霊界が送って来る刺客がゾンビで、つまり、死体は既に死んでいるから刺客といっても殺せないわけで、しかしゾンビに噛まれれば、自らの意思で死体に留まる死体たちは、その意思を失ってたんなる自動機械としてのゾンビになってしまう、という設定がまず面白いのだった。
特に面白い7話と8話の脚本を書いたのは同じ千葉雅子という人で、この人は一体どんな人なのだろうと思って調べたら、「猫のホテル」という劇団をやっている人らしい。(でもこれは、映像だから面白いのであって、演劇としてやって面白いとはあまり思えないのだが。)この脚本を、監督の豊島圭介は、(北野武-黒沢清的な)任侠ものの感じと、ロメロ的な感じとをごちゃ混ぜにして見せるのだが、それはたんにパロディという水準を超えて、映画としてかなり質が高く作り込まれていてる。豊島監督のつくったものは、今までどれもいまひとつという感じをもっていたのだが、はじめて面白いと思った。メメント森役の松重豊のおかげで成り立っているという部分も大きいけど。でもここまで完成度が高いとB級テイストじゃなくなってしまう。