●「文藝」に長めの原稿を書いたので、文藝賞の受賞パーティーの案内状をもらっていて、ぼくにとってパーティーというのはこの世で最も苦手な場の一つなのだが、有名作家をナマで見れるかもというミーハー心でちょっとのぞてみることにした。有名作家は、居たのかも知れないのだが、あまりにも人が多過ぎてごったがえしていて、誰が誰ともよく分からなかった(それに会場は異様に蒸し暑かった)。田中康夫の姿を遠くからチラッと見ることができて、おおーっ、と思ったくらい。会場で磯崎憲一郎さんにお会いして、「あれっ、古谷さんなんでいるの、知り合いがいると思ってふらっと来ちゃったんじゃないの」と言われる。まあ、そんなようなものなのだが。磯崎さんは、綿矢りさとツーショット写真を撮りたいと言って、綿矢さんを探していた。去年の文藝賞の受賞作家である磯崎さんは、その受賞パーティーでも綿矢さんと一緒の写真を撮りたいと頼んで、綿矢さんは写真が嫌いだからと編集者に断られたそうで、今年こそはそれを実現したい、と思っているらしい。それが実現出来たかどうかはぼくは知らない。というか、磯崎さんのことだから、この「願い」がどの程度「ネタ」なのかを判断しかねるのだが。磯崎さんは、「古谷さん、これテリーヌって言うんですよ、知ってました?」と言って料理をとってくれた。「テリーヌ」って、何か聞いたことあるっぽいけど、どんなものかは知らなかった。実物を見ても、何がどうなっていれば「テリーヌ」なのかはよく分からない。「古谷さん、ウニ食べましょうよ、ウニ食べたことあります?」と言ってウニの寿司もとってくれたのだが、前にウニを食べたのがいつなのか記憶がないので、もしかしたら初めて食べたのかもしれない。「古谷さん、ウニ食べるのはじめてらしいですよ」と磯崎さんが言いふらす。あと、「ポニョ」について少し話した。「ポニョ」は素晴らしいと意見が一致した。カンヌで、半魚人ポニョが波の上を走るシーンを観て、ジム・ジャームッシュが拍手をしたらしいという話を、別の女性作家から聞いた。ポニョは何故ハムが好きなのか、その点についての説明が一切ない、という話を、ハムを食べながらした。(別に磯崎さんとだけ会ったわけではないのに、、磯崎さんの話だけを実名で書くのは、磯崎さんが「書け」と言うから。)
的場浩司が、夜中に目が覚めたら、布団の上に小さなおじさんが数人いて、でもそのまままた眠ってしまって、朝起きたら、かなり短髪である自分の髪の一部が三つ編みにされていた(小さい人だからこそ出来る技?)という事件があったという話をしていて、それについてオカルトの専門家に聞いたら、その小さなおじさんは宇宙人で、三つ編みに編まれた髪はミステリーサークルだと言われた、という話をテレビでやっていた、という話をある作家から聞いて、とても面白いと思った。ちっちゃいおじさんとか、ちっちゃい武士とか、人はよく「ちっちゃい人」を見るけど、そのサイズの小ささにはどのような意味があるのか、とても興味がある。ぼく自身は、夢のなかでも、ちっちゃい人が出て来ることはないのだが、だからこそ、ちっちゃい人を見る人の頭の構造が気になる。