●ある映画作家についての原稿をそろそろ書き始めなければならないのだが、なかなか書けそうな感じにならない。様々なことを、一本の線としてつなげる糸口が掴めない。これ以外にも、四月十日前後までに書く約束をしている原稿がふたつあるので時間もあまりない。そのプレッシャーから、昨日、今日とひさしぶりに飲酒する。今日は、その映画作家が世界的なベストセラーを映画化したものをDVDで観る。二人のまったくことなるタイプの俳優、二つのまったくことなるタイプの身体を、一つのフレームのなかに同時に納めようとすること。この映画で、この映画作家-俳優は、他の映画ではほとんど見せないような、ちょっと間の抜けた、にやけた顔をたくさん見せている。縦方向に傷のような皺が刻まれた鋭角的な顔の造作が崩れるくらいに口をおおきく横にひろげて、ニカッと笑う。この顔をすると、この映画作家-俳優は、いかにも「安っぽい二枚目」という顔になる。手足が長く、背の高いその身体も、持て余し気味な感じになる。そのことを知っていて抑制していると思われるその顔を、この映画では意図的に多用している感じだ。(そういえば、昨日観た宇宙へ行く映画では、上司に自分より背の高い俳優を起用して、この映画作家-俳優ではめずらしく、相手を見上げるような視線の顔を見せていた。)