●嘴がオレンジ色で、基本的に白と黒とが混じる羽根に、一部、茶色い色が加えられている。雀よりもほんの一回りくらい大きい。多分、ムクドリってことで良いのだと思う。川原の、芝生が広がっているところに、無数のムクドリが、ひらひらと羽根を動かして、ほんの少しだけ浮いて、地面すれすれを飛んでいる。飛び交っている。その羽ばたきは、鳥というより蝶のようだ。地面ぎりぎりのところから、もっと高いところへと上ってゆく時は、小鳥のように(まさに小鳥なのだが)、羽根を小刻みにせわしなくパタパタ動かすのだが、地面ぎりぎりを飛ぶときは、もっと軽やかなひらひらした羽根の動きで、ふわふわと飛んでいる。ふわふわと言っても、その移動の速度は蝶よりも早く、しかも、蝶よりは重いので風の影響も少なく、左右へと小回りよく自在に方向をかえることができるようだ。蝶のようにひらひらと羽根を動かすのだが、あきらかに蝶よりは重たくて、蝶よりもはやく直線的に動き、頻繁に方向をかえる。カラスのような、それなりの重さをもち、広げると体長の何倍にもなる大きな羽根をバサバサッと動かすことで浮力を得て、地面ギリギリを飛ぶときは、ひろげた羽根を羽ばたかせず、グライダーのように宙を滑るような飛び方する鳥とは、その浮力をコントロールするやり方がまったく異なっているように見える。蝶のようには軽くなく、カラスのようには重くない身体をもった鳥の、浮くでも飛ぶでもないような重力への抗し方、あるいは、重力との関係のし方。そういうやり方で、地面の近くを飛んで、おそらくエサを探している。こういう、飛行-浮遊のかたち(イメージ)、こういうやり方(スタイル)があること、こういうやり方をする存在がいること、を、今まで知らなかった。
そういう小鳥が、まだらに土の露出した黄緑の雑草まじりの芝が広がる河川敷にたくさんいて、地面ぎりぎりを不思議な浮遊感で飛んでいる。飛び交っている。たまに着地して、着地するとまた、小鳥特有の、唐突で小刻みな動きで、ツッツッツッと歩いてゆく。かなり近くに寄ってみても、なかなか逃げない。