群像新人文学賞の贈呈式に行って来た。知っている人が全然いなくて、一人で隅の方でぽかーんとしていた。ナマ田中和生をはじめて見た、とか、絲山秋子は思いの外背が高く、思いの外顔がちっちゃい、とか思いながら。二十六階からの景色を眺めて、埼京線有楽町線を乗り継いでここ(講談社)まで来たけど、新宿はすぐそこなんじゃん、とか思いながら。パーティーとか苦手だし、そうなることは目に見えていたのだが、受賞者の野水陽介さんがどんな感じの人なのか、その「実物」を一目見てみたいと思ったので、のこのこ出かけて行ったのだった。野水さんは、「群像」に載っている写真の感じよりもずっと普通っぽく見えた(スーツ着てたし)。背が高かった。
しばらくして、人混みのなかから福永信さん、長嶋有さん、青山七恵さんを見つけられたので、ちょっとほっとした。選考委員である長嶋さんの仲介のおかげで、野水さんと少し話すことができた。野水さんは、やはりとても面白い人で、もしかしたら小説よりも作家本人の方が面白いんじゃないかと思えるほどだった。だからきっと、これからもっと面白い小説を書くと思う。
青山さんが、「わたし、野水さんと同じ歳なんですよ」と言うので、「えっ、青山さんそんなに若いんですか」と言ってしまったのだが、後から考えるとこれは失言だったと思った。ぼくとしては、既に小説家としてしっかりとしたキャリアのある中堅というイメージの青山さんが「まだ二十七歳」であることに驚いたのだが、青山さんは、野水さんと青山さんが同じ年齢には見えない(青山さんが老けて見える)という意味にとったのではないかと、帰りの電車のなかでふと気づいて、あー、と思った。