●三、四日前に、ふと思いついて小説の書き出し部分を書いてみた。思いついたのは、≪姉は、あの男が過去につき合ったすべての女性たちがそうであったのと同様に帽子屋で働いていた≫という一文で、そこから先の展開を考えて千二百字くらいの場面を一つつくった(「場面」にはなっていないのだけど)。そしてこの後、この「あの男」には一切触れないままで行こうと考えた(というか、この書き出しの一文が、すべての出発点であるにもかかわらず小説全体から置き去りにされるような感じ、これは途中で気が変わるかもしれないが)。ただ、書いた時点では、ちょっとひねり過ぎていていまひとつかなあとも思っていた。数日おいて、改めて今日読んでみたら思いのほか、というか、かなりなかなか面白いと思えた。このまましばらくつづきを書き継いでみようかという気になれた。姉妹モノで、イメージとしては「ふたつの入り口が与えられたとせよ」(「群像」2011年4月号)の主題の発展形みたいな感じを考えている。