●テレビが映らないので、食事の時に流しておくための映像を探す。映画とかだと集中して観てしまうので、だらっと流しっぱなしにしておけるようなものを探すのだが、なかなかない。ずいぶん前にダビングしたビデオの山のなかから『フィッシング・ウィズ・ジョン』をみつける。ジョン・ルーリーデニス・ホッパーがタイで釣りしているところをだらだら撮っているだけのもの。デニス・ホッパーが普通におっさんで、つまんないことばかり言う。テレビが映らなくなるということがなければ、このビデオを再生することは一生なかったかもしれない。特に面白いということもないのだが、うるさかったり、がちゃがちゃしてたりしないし、嫌な感じがまったくないので、食事中に流しておくにはちょうどいい。釣りを主題にしたゆるーい映画といえば、いまおかしんじの『南の島にダイオウイカを釣りにいく』という傑作があって(確か『おじさん天国』のDVDに入っている)、それには遠く及ばないけど。
●食事の後、ソクーロフの『精神の声』の第五話を三十分くらいだけ観た(たまたま『フィッシング・ウィズ・ジョン』の隣にビデオがあったから、なんとなく再生してみた)。やっぱ、ソクーロフはすげー、と思った。最初の、日向ぼっこする兵士を捉えた大ズームバックとか、これ絶対ドキュメンタリーじゃないじゃん、ここにこうしていてくれって指示しなきゃ撮れるはずないじゃん、と思ってしまう(しかも、ワンカット撮るのに一日がかり、みたいな感じで)。最初にどでかいハッタリをかまして人を引き込んでしまうペテン師みたいなオープニング。いまどき、(空間的な意味というだけでなく、時間的な意味、そして題材的な意味でも)「フレーミング」だけで人を驚かせることが出来るのはソクーロフだけなんじゃないかと思った(オープニングだけでなく、あらゆるカットにおいて)。ソクーロフのつくる画面は、(最近亡くなったリュプチャンスキーなどとは対極で)光を排除することによって出来ているような気がする。あり得ない話だけど、光のないところではじめて浮かび上がってくる視覚(光じゃないものによって見ている ? )という感じ。
●毎日、部屋と喫茶店の往復だけで生活していて、新聞もとってないし、テレビが映らないからここ三日はニュースも観てないので、ますます、世の中から隔絶されている感じになってきた。