●現代ハイツのGALLERY Den & .STでやっている「tokyo story vol.1」という展覧会が渋くて充実していた。
http://gendaiheights.sakura.ne.jp/gal07.html
上手くやり過ぎるとちょっとあざとい感じに見えてしまったりすると思うような作品が多いのだが、そうなっていないというのは、これらの作品があくまで「描く」ことによって成立しているからなんじゃないだろうか。でも、では「描く」っていのはどういうことのなか。たんに、具体的なモチーフがあるということなのか。しかしむしろ、モチーフへの(モチーフからの)リアリティよりも、絵の具なり写真というメディアなりのリアリティの方が優先されている感じが強い気がする。とはいえ、そのような絵の具のテクスチャーによる工芸的な完成度にはしると、このような作品はすぐにあざとくなってしまうと思うから、必ずしもそうではないと思う。だからここでいう「描く」は、メディウムとイメージとの距離感のリアリティとかかわっているのではないか。一筆ごとに(一工程ごとに)メディウムとイメージとの距離が測られ、その結果として、あるテクスチャーの感触が生まれてくる、というような。
最初に「渋い」と書いたけど、井上実の作品だけは渋いというよりはじけている。最近の井上くんの作品のはじけ方はすごい。そしてこのはじけ方は、まさに「描く」ことのリアリティの積み重ねによって導きだされている。井上くんは、ここにきて本当に、画家としか言えないような画家になったんじゃないかと、嫉妬に近い感情とともに思う。