●なびす画廊で「世界の重さ、最初の手」(上田尚嗣・境澤邦泰)。これはすごく面白い展示なのだけど、それは「上田尚嗣の作品」が面白いとか「境澤邦泰の作品」が面白いという感じとちょっと違う(個々の作品は面白くない、と言っているのではない)。この二人の作品が同時に展示されているという状態がすごく面白い。これは、単純な対比−編集の効果や展示−配置の効果ということでもないと思う。何か幸福な出来事が「ここ」で起こったという感じ。
勿論それは偶然ということではないと思う。それぞれ一定の質を持った作品をつくる上田尚嗣という作家、境澤邦泰という作家がいて、二人の作品を同時に展示しようという企画者の狙いや直観があり、実際に展示を設営する時の様々な配慮がある。それらの積み重なりや噛み合いが「この展示」を生み出しているのだけど、そういうことには還元できない、それらそれぞれの意図や配慮を超えた相互作用のようなものが、この展示には起こっているように感じられた。
だからぼくが言っていることはもう「作品」ということとは違う何かのことなのかもしれない。ある日の夕日が、いろんな気象条件が重なって、その日だけ特別きれいだったとか、そういうことかもしれない。だから「作家」としては、そういう言われ方は不本意であるかもしれないのだけど。
トークがあって、トークは境澤さんの一番大きな作品を背にして行われた。境澤さんの作品を眺めつつぼんやり話を聞きながら、ぼくはそれらとはあまり関係のない、自分の作品についていろいろ考え、イメージしていた。久しぶりに大きな絵を描いてみたいという気持ちが徐々に盛り上がってくるのを感じていた。それは、話の内容とも、この展覧会で展示されている作品とも直接的な繋がりはない感じのものだけど、それでも、それらに刺激されたということなのだと思う。
http://www.nabis-g.com/exhibition/2013/sekainoomosasaishonote-2.html