●昨日の夜、もう何度目か忘れたくらい繰り返し観た『シュタインズゲート』の何周目かを最後まで観終って、今日は上野の美術館に行ったので、ここまで来たら秋葉原を歩くしかないと思って、美術館は早々に切り上げる感じで、御徒町を通り抜けて秋葉原をぶらぶらした。前に上野から東京駅まで歩いた時、偶然に神田ふれあい橋と柳森神社を見つけて(通りかかって)すごく興奮したのだけど、今回はそのような発見は特になかった。それでも、ダイビルの前のコインロッカーから駅を抜けて、万世橋を渡り、柳森神社の前を通って神田ふれあい橋を渡って駅の方向に戻り、ラジオ会館横のアーケードみたいなところ(ラジオ会館に潜入するために鈴羽がロープを登ったところ)を抜けて駅前に出て、改めて不在のラジオ会館(跡)を見上げてみたりすると、自分のなかで何かが動き出す感じがある。それは、フィクションが現実空間に流れ出てくる感じでもあり、現実空間がフィクションのなかに入り込んでゆく感じでもある。ラジオ会館が既にないという非対称性がそれを一層引き立てる。なんというか、風呂桶のなかで分離している冷たい水と暖かいお湯とが、今、混じり合っている(しかし、完全に混じることはない)という、あの、ぐわーっとした感じというのか。
●この前は閉まっていた柳森神社(≒柳林神社)の入口が今日は開いていた。ぼく以外にも、あきらかに「聖地巡礼」と分かる二組の人がいた。猫はいなかった。
●劇場版『シュタインズゲート』のトレーラーを観ると、どうやら「岡部倫太郎の消失」とでもいうような話みたいだ。これは、狙いとしては面白くて、期待できる感じ。
http://www.youtube.com/watch?v=rDsCNz3pWUg&feature=player_embedded
もともと、「エンドレスエイト」や『涼宮ハルヒの消失』と『シュタインズゲート』はかなり密接な関係があるように思われる。劇場版「シュタゲ」を観る前に、「エンドレス…」と「消失」も観直しておこうかと思った。ただ、『ロボティクスノーツ』の出来からすると、もしかするとすごくつまらないという恐れもある。でも、それはそれでいい。
八重洲ブックセンターに寄って『ノックス・マシン』(法月綸太郎)を買った。電車のなかで、楽しみに表題作を読み始めて、最初の方は好みのネタだと思ってけっこうワクワクして読んだのだけど、半ばを少し過ぎたあたり、時間線が分岐するという話のところでなんとなくオチが見えてしまい、波動関数の収束についてのコペンハーゲン解釈多世界解釈の対立の話が出たくらいのところまできて、いや、こんなマニアックな話でそんなストレートなオチはないだろうとは思うのだけどなんかそっちの方向に向かってるよなあ、と危惧して、エピローグの前ではもう確信していたけど、もう一枚どんでん返しがあるかもと期待したのだが、まったく予想通りのオチだった……。オチもそうだけど、物理学や量子力学ネタの使い方がそのまんま過ぎるのではないかと思ってしまった。
いや、ぼくが、こういう話が好きで(『シュタインズゲート』もまさに「こういう話」なのだが)、こういう話をいっぱい読んだり観たりしていてすれちゃっているからかもしれないのだけど。タイムスリップの話で、時間線の分岐を否定する(抑制する)としたら、物語の構造は原因と結果がループ状につながる(反転する)という形になりがちなわけだけど、そこまでは読者の想定の範囲内で、それをどう超えるか(あるいはそこにどう独自の色をつけるか)までいかないと説得されないという気がする。
あ、でもまだ表題作しか読んでないので、もしかすると、この本は主題的には連作みたいになっていて、これはまだ主題の提示のようなパートで、今後この主題が別の形として展開されてゆく、というつくりになっているのかもしれない(少なくとも表題作の続編は収録されているし)。
●「ノックス・マシン」に、もしタイムマシンが出来てしまったらどんな犯罪が起きてもその現場に遡行できるのだから、誰も探偵小説の謎解きになど興味を示さなくなるだろうというような記述が(ノックスの内省として)書かれているのだけど、そういう状況でミステリを成立させようとした例の一つとして『虚構推理』があるのではないだろうかと思った。というか、われわれは既に、そのような前提ではじまるフィクションの方をリアルだと感じるようになってしまっているという気がする。
●そういえば、『シュタインズゲート』で使われる「世界線」は、物理の言葉の使い方としては間違っているらしい(前に西川アサキさんから聞いた)。「相対性理論」についての啓蒙書などを読むと、確かに「世界線」は別の意味で使われている。おそらく、法月綸太郎の書く「時間線」の方が適当なのだろう。とはいえ、「時間線」より「世界線」の方が言葉としてインパクトがあるしイメージも湧きやすいから、間違いを承知であえて使っているのかもしれない。