●ある問題について、専門的な知識や特定の文脈の共有がない人にわかるような説明をするということと、俗受けし易いような形に矮小化するということは全然違うことなのに、しばしば後者が前者であるのように取り違えられる。
難しいことは分かり易く噛み砕いてもなお難しいはずだから、それを簡単に分かったと思ったとしたら、きっとそれは何も分かっていないということだと思う。だからどうしたって、難しいことはなかなか呑み込めないし、多くの人には伝わらない。
(理解に高度な専門知識が必要であるという「難しさ」と、誰がどういう形で考えたとしても難しいという時の「難しさ」は、「難しさ」の意味が違うのだから、たとえ、専門性をうまく一般性に開くことに成功したとしても、それは前者の難しさが解かれただけで、後者の難しさはそのまま残るはずだし、もしそれが残らないとしたら、それは説明(変換、翻訳)として間違っている――問題を矮小化している――ということになる。)