●今期の深夜アニメ、つづき。気になっていたけど見逃してしまった『アウトブレイク・カンパニー』の一話目をネットにあがっていた動画で観た。これは、作品としてどうこういうのではなく、趣味としてとても好きです。『げんしけん二代目』が終わってしまった心の隙間をこの作品が埋めてくれるかもしれない。ひきこもりでオタクである主人公が、オタク文化を広めるという任務を負って異世界へ派遣される話、というと、異世界で苦労して成長するみたいな話---それだと典型的なファンタジーになる---かと思うけど、実はその異世界が既にはじめからオタクにとって楽園であるような世界になっているという、逆『AURA』という感じの話。
典型的なファンタジーだと、異界は主人公に試練を与えるための場所(外的な現実に耐えられるように成長させるための、一時的な移行対象)なのだけど、ここでは異界は徹底して主人公を甘やかす空間としてある。ただ彼は、そこへ半ば強制的に、公的なミッションを背負って送り込まれている。世界や関係はすべて彼に都合のよい幻想で編まれているのだが、「彼が(公的なミッションによって)ここにいる」というその存在そのもの(存在の仕方)だけは、彼にとっての外的な現実(彼の力ではどうにもならないこと)だと言える。彼にとって異界(つまり幻想の領域)は職場でもあり、幻想こそが幻想とは別の原理(経済や政治)への通路になってもいる。この微妙な設定が、今後どう効いてくるのか楽しみだ。
一方、「AURA」や「中二病でも…」みたいな話では、世界や関係性は主人公にとってはどうにもならないものとして絶対的に押しつけられてあるのだが、自分自身の存在の仕方についてだけは幻想が作用する(幻想によって守られる)範囲になっている。いわば、自分以外は全部幻想(自分=現実、世界=幻想)か、自分以外は全部現実(自分=幻想、世界=現実)か、という裏表の関係になっている。