●Deep Dreamを進化させた「A Neural Algorithm of Artistic Style」というアルゴリズムをドイツの研究者がつくったという。例えばある写真を元にして、それをピカソゴッホ風のタッチで描いたらどうなるか、みたいな変換ができる。
http://arxiv.org/pdf/1508.06576.pdf
それを利用してつくったという下の動画(ディズニー『不思議の国のアリス』を様々に変換したもの)を観る限りでは、「だからどうしたの?」という感じのクオリティでしないけど。これだと二つの画像をただランダムに混ぜ合わせているくらいにしか見えない。
https://vimeo.com/139123754
だけど、例えばゴッホの全作品のデータから「ゴッホの絵画の特徴量」を抽出して、ゴッホがディズニーのキャラクターを描いたらこうなる、というものを生成できる、ゴッホ絵画ジェネレータのようなものを考えることは出来るのではないか。たんに、ディズニーキャラクターをゴッホ風のタッチで描くだけなら別に人間でも出来るし、何も面白くないのだけど、仮にゴッホが実際に、星月夜やアルルの跳ね橋に見出したものと同等のものをディズニーキャラクターに見出したとして、ゴッホ自身が本気でディズニーキャラクターを描いたものとして観ても遜色ないようなクオリティを持った絵を生成できるようなジェネレータを考えられるのではないか、と。
生きているゴッホが実際にディズニーキャラクターを観たとしても、おそらく決してそれをモチーフに(本気で)絵を描くことはなかっただろう。だからそのジェネレータはゴッホ自身とは違うし、その絵画はゴッホの絵ではない。つまり、(たんに仮想的なゴッホの新作ということではなく)この世界に新たなものとして生み出された何かになるはずだろう。とはいえ、それ(ゴッホ+ディズニーキャラ)が絵として面白いものになるのかどうかは分からない。
ゴッホ絵画ジェネレータのようなものを開発することこそが、真のフォーマリズムと言えるのではないか。そして、それが実現する時にはじめて、フォーマリズムの限界が確認できる。ゴッホの作品の全てから、本当にゴッホ絵画ジェネレータをつくることは可能なのか。ゴッホの脳、身体、見たもの、生成された感情や思考、生きた環境、経験した出来事、それらすべてからゴッホの「絵画作品」が昇華的に創造(変換)されたとして、ゴッホの作品のみからその「変換規則」を導くことは可能なのか、と。
つまり、コピーゴッホをつくらずに、抽象化されたゴッホ絵画ジェネレータだけを抽出できるのか、ということ。そして、それが可能だとして、そこに「意味」はあるのか、と。
(一つ問題があって、ゴッホ絵画ジェネレータは「どの時期」のゴッホでもなく、時空ワームのように時間の外から把握されたゴッホであることになる。時間的展開を考慮せずに、ただ全作品のデータからつくればそうなるだろう。たんに、つくるときにちゃんと時間的発展を考慮し、○年ころのゴッホという設定を可能にすればいいというだけの話かもしれないが。しかし、どの時期のゴッホとも似ていない絵を生成する、抽象的なゴッホ絵画ジェネレータというのも面白いかもしれない。)