2022/10/23

●AIによる画像生成について、目にする記事のほとんどが(写真も含めた)いわゆる「具象」のものばかりだが、抽象も結構いけると思った。

VECTIONの会議で、掬矢さんのPCでStable Diffusionを試してみたのだが、三つくらいのワードを入れるだけで、かなり面白い作品が、すぐに生成されてくる。まず、「ドラえもん」「ピカソ」「キュビズム」というワードを入れたら、ピカソというより、岡本太郎みたいな画像が出てきた。次に、そこから「キュビズム」をとって、「ドラえもん」と「ピカソ」だけにしたら、今度はカンディンスキーみたいなのが出てきた(「ドラえもん」要素は色彩と丸みとして表現されるようだ)。つまり、Stable Diffusionは「ピカソ」の特徴を充分にはつかんでいないということだろう。

さらに色々試してみて、「ドラえもん」「ジョルジュ・ブラック」「崩しすぎない」と入れたときに、すごく面白い、良い作品が出てきた。これはもう、誰に似ているとも言えない、ユニークで、「趣味」もよく、非常に充実した複雑性を持った抽象絵画で、例えば、ポリアコフの友人で、強い相互影響関係にあった、今まで知られていなかった画家が発掘され、これがその作品だと言われれば信じてしまうし、この画家はとても良い画家だから(ポリアコフよりも良い画家なのではないか)、ぜひ他の作品も観てみたいと強く思うだろうという、そのくらい良い画像が生まれてきた。。

Stable Diffusionが誤解しているのは、ピカソもブラックも基本的に「具象」の画家であり、かなり崩してあるとはいえ、見てそれとわかる対象を描いているのに、「ドラえもん」という対象を色彩と丸みとして抽象化して、完全に解体してしまうというところだ。とはいえ、「ピカソの再現」ではなく、新しい画像の生成という意味では、Stable Diffusionはとても優れていると思った。

(冗談ではなく、作品を作るモチベーションがダダ下がりになる。)

●ただ、この手の画像生成(絵画再現)の話題でとても不満なのは、「フェルメールの絵の外側」にしても「ゴッホの暴走族」にしても、フレームということが全く考慮に入れられていないということだ。ゴッホの色彩やタッチや形態のクセを再現することは意識されていても、ゴッホのフレームが全く意識されていない。さらに、フェルメールとなれば、まさに「フレーム命」の画家なのに、その完璧なフレームを拡張してしまったりするのは、秩序の破壊以外のなにものでもないだろう。フレームを拡張したフェルメールフェルメールではない。というか、「出来こそないのフェルメールもどき」ですらなくなってしまう。

絵画にとって「フレーム」がいかに重要なのかという点について、多くの人にあまりに理解されていない(というか、軽く考えられている)のだなあと、暗い気持ちになる。というか逆に、多くの人が当然のようにフレームを無視するという事実は、近代絵画における「フレームの重視」という態度がそもそも(人類史的には)間違っていた、という可能性もあるということか。いや、そうでないことを祈りたいが。