●『響け!ユーフォニアム2』、終わってしまったなあ。二期の最終話に、一期の回想を入れてくるということは、一期、二期通して「これで終わり(3期はないよ)」ということなのだろう。
(塚本は塚本らしいまま、黄前-塚本関係はイマイチはっきりしない感じで終ってしまった。二期はあくまで田中先輩と黄前の話だということか。というか、黄前と塚本が二人でいい感じで歩いているところを、「黄前をお前などに渡すものか」と田中先輩が嫉妬して邪魔した、という解釈も成り立つのではないか。)
ラストも、いい感じできれいに終わってはいるけど、田中-黄前関係については、もう充分に描き切ってあるので、黄前の「告白」には今更感があることは否定できない。「先輩のこと苦手でした、でも今は大好きです」って、そんなのみんなもう分かってるよ、と。わかってはいても、というか、わかっていることが前提で、ダメ押し的にちゃんと「大好きです」と口にするというところがミソなのか。
この作品では、黄前と田中先輩との関係と、黄前と姉との関係はアナロジー的に重なっているから、姉に対して「大好き」と言ったからには田中先輩にもちゃんと「大好き」と言わないと形式的に均衡しないということはあるか。そして、姉に対する「大好き」と田中先輩に対する「大好き」は、ユーフォに対する「大好き」と重なってくる。つまりこのアナロジーは、ユーフォニアムという楽器によって代表されるポジティブな価値をもつ対象との関係(というか、ポジティブな価値をもつ対象へと導いてくれる関係)をあらわしている。だから、この関係は師匠と弟子、あるいは先行世代と後発世代の関係で、つまり、先輩と後輩であり、姉と妹となる。
(そうか、だから、姉との軋轢と和解と釣り合うように、「苦手でした」と「大好きです」との両方を言って、その後に「響け!ユーフォニアム」の楽譜が伝承されるという場面になることには、必然性があるのか。)
さらに、田中先輩と黄前もアナロジー的に重なっている。二人はどちらも、本音をみせない、ガードの堅いキャラである。田中先輩はより完璧にガードが堅く、黄前は、中途半端にガードが堅い。そして、まっすぐでノーガードの高坂がいる。つまり、黄前と田中先輩との関係と、高坂と黄前の関係は似ている。黄前が田中先輩に対して、本音をみせないし、見下されているように感じると言ったように、高坂も黄前に、普通のふりして、どこか見透かされているようだ、と言う(確か、9話で)。そして、痛いところでぽろっと言葉になって出てくる(本気で全国なんか目指してたの?)、と。だから黄前は「ひっかかる」存在なのだ、と。つまり、普段隠しているもの(何かを隠している気配)があって、それがある時にぽろっと出てくることが「ひっかかり」になる。黄前にとっての田中先輩も「ひっかかる」存在であるはずで、一方でそれが苦手感を生み、しかし他方で魅惑の元ともなる。黄前もまた、普段は完璧にガードされている田中先輩の「隠されたもの」がぽろっと出てくるところをみることで、田中先輩に強く惹かれるようになる。
(この関係の系列の変奏として、鎧塚と傘木の関係もあると言える。)
こちらの関係は、二人称的な他者との関係から魅惑が発生する形式であり、いわば恋人との関係に近い。
だから、黄前と田中先輩との関係は、一方で黄前と姉という師弟関係と、もう一方で黄前と高坂という恋人的関係と、その両方とアナロジー的に重ねられている。だからこそ、黄前と田中先輩との関係は、この作品のなかでも特別なものとなる。さらにいえば、そのどちらでもない、水平的な友愛関係として、吉川と中川の関係(ケンカするほど仲がいい)があると言える。