タックスヘイブンについて調べていて思ったのは、イギリスってすごく面白い国だということ。ロンドンの中心部に、ロンドンだけどロンドンじゃない、イギリスだけどイギリスじゃない、シティ・オブ・ロンドン・コーポレーションという自律した地方政府があり、そしてその国内外国であるようなシティ・オブ・ロンドンが、イギリスの中央銀行であるイングランド銀行を牛耳っている。故に、金融が政府から自律している。
それと、これもはじめて知ったのだけど、王国属領というのがあって、これは、イギリスには属さない、イギリス国王が持っている領地なのだという。シティ・オブ・ロンドンという「内の外」もあれば、王国属領という「外の内」もある、と。さらに、イギリスには海外領土というものがあって、これは旧大英帝国の植民地で、その後、独立しなかった14の小さな島嶼だ。アンギラバミューダヴァージン諸島ケイマン諸島ジブラルタルモントセラトタークス・カイコス諸島など。
そしてこれらが、シティ・オブ・ロンドンを中心とする、タックスヘイブンのグローバルなネットワークをつくっている、と。(1)イギリスより古いイギリスであり、ロンドンより古いロンドンであるシティ・オブ・ロンドン・コーポレーション。(2)イギリスではないが、イギリス国王の持ち物である王室属領(ジャージー島ガーンジー島マン島)。(3)イギリスから地理的に遠く離れた、かつての帝国の名残りである海外領土(ケイマン諸島バミューダ)。そしてそこに、(4)既にイギリスの統治下にはないが、歴史的な経緯として非常に深いつながりがあった地域(香港やシンガポール)。
これら、それぞれ全く歴史や経緯が異なるが、しかしどれも、半ばイギリスであり、半ばイギリスでないという共通項をもつ地域たちが、その共通項によりネットワークをつくることで、タックスヘイブンを可能にする巨大なオフショア経済圏をかたちづくっている、と。すごく「ポストモダン」ぽい。
●「オフショア」ってどういう意味? 意外と知らない経済用語を解説!(マイナビ学生の窓口)
https://gakumado.mynavi.jp/gmd/articles/9213
《自分の国を「島」のようなものと考えてください。まず、国内の業者間で行う金融取引、国内の業者と国外の業者間で行う金融取引がありますね。島の中で完結する取引と、自分の島とよその島で行う取引というわけです。いずれも自分の島の岸で行うので「onshore(オンショア)」です。》
《ところが「よその島同士の取引をうちでやってもいいよ」という特別な措置を設けることがあります。つまり、自分の島の沖合に、よその島同士の取引のための場所を作るわけです。これが「offshore(オフショア)」です。》
《わざわざよその土地に行って取引するメリットがあるのかと思うかもしれませんが、このニーズは非常に高いです。たとえば、日本企業がロンドンに行ってワラント債(新株予約権社債)を発行、それを日本企業がロンドンで購入するなんてことは普通にあります。日本のオンショアでやると税金も高いし規制も多いから、なんてことが原因です。オフショア・マーケットでの取引は規制が緩く、また優遇措置を利用できるので「おいしい」ということですね。》
《ロンドンが「世界のオフショア・センター」といわれるのは、オフショアとオンショアの区別がはっきりしないためとされます。ロンドンのような金融センターではもはや金融当局の規制を及ぼすことも難しい、さまざまな取引が行われています。》