2019-10-13

●もはや、『台風クラブ』がリアルではない時代になってしまったのだなあと思った。『台風クラブ』において台風は、少年や少女たちの感情の爆発的な発露と同期するような、死への予感を含む祝祭感をもった「適度なカタストロフ」であると思うのだが、今では台風は、人間の感情と同期してその比喩となるような規模を越えてしまって、リアルに世界の崩壊と結びつきかねない恐怖の対象となってしまった。豪雨と強風が高揚感をもたらさない。台風は、少年や少女の感情よりも、ゴジラのような存在に近いものになってしまった。

(台風クラブ』のリアリティの低下の主な原因は、世界的な気象の変化---人新世---にあると思うのだが、それだけでなく、「破壊()への衝動」的なものが、たとえば「死に至る生の高揚」と表現されるような豊かさや厚みを失ってしまっているということもあるように思う。現代における「破壊への衝動」は、ひたすら薄っぺらで無内容で自動的で不気味なものとして出現していると感じられる。たとえば、いくらでも湧いて出る不毛で執拗なクソリプやクソコメント、秩序を崩壊のみを目的とする炎上マーケティングのようなものとして。)