●『呪怨: 呪いの家』は、カップルたちの話でもある。物語を通じて、黒島結菜と井之脇海が表の(正の)カップルだとすると、里々佳と長村航希が裏の(負の)カップル。そして、二つのカップル(夫婦)が、交差するようにして殺し合う(3話、4話)。最終話にも、呪いの家に新たなカップル(夫婦)が入居する。で、荒川良々もまた、カップルを形成している。おそらく、物語の始めの方ではたんにアシスタントであったと思われる女性と、物語の終わりではカップル(夫婦)となっているようなのだ(カップルの物語の幕開けにふさわしく、この作品は荒川良々とアシスタントの女性が二人で事務所にいる場面からはじまる)。だから、荒川良々は、表のカップル、裏のカップルに次いで、潜在的な三つ目のカップルとして物語を貫いていたことになる。さらに言えば、最終話に出てきたブリーフ男が仮に「大家の息子の幽霊」であったとするなら、呪いの家には、女性の幽霊だけでなく男性の幽霊も捕われている(幽霊のカップル)、ということになる。だとすれば、幽霊も含め、主要な登場人物でカップルを形成しないのはただ倉科カナだけだということになる(故に、倉科カナの重要性が意識される)。
(この物語がカップルの物語だということは、これが妊娠-胎児-子供という主題を扱っている物語であることからの必然なのかもしれないが。)
で、気になるのが、表のカップルと裏のカップルの影に隠れて、あたかも特権的で単独的な語り手であるかのように見えていた荒川良々が、実は潜在的カップルを形成していたことが明らかになったとしたら、この後(シーズン2以降)、彼はもう無傷ではいられない(中立的な語り手の位置にはいられない)のではないか、ということだ。荒川良々(のカップル)がどのように呪いに巻き込まれていくのか、特権的な語り手の位置がどのように崩れていくのか、が、シーズン2の展開としてとても気になる。