2020-12-16

●ネットでたまたまみかけたのだけど、映画版の『ビー・バップ・ハイスクール』を最近はじめて観たという(おそらく若い)人が、この映画に頻出する「シャバゾウ」という語を、非ヤンキーを示す不良たちの(今では死語となっている)隠語と解釈していて、なるほど、そう考えることもできるのか、と思った。

どうでもいいと言えばどうでもいいのだけど、でもそれは間違いで、「シャバゾウ」は原作者きうちかずひろの出身地である福岡の方言で、「根性無し」「意気地無し」という意味で、おそらく方言としては今でも使われている。

(とはいえ、映画版「ビーバップ」は明らかに関東で撮影され、登場人物も関東色がつよく、博多っぽい感じはほぼないので、事実上、隠語のように使われていることになる。)

また、「ヤンキー」という語を使っているけど、『ビー・バップ・ハイスクール』の時代はまだ、(少なくとも関東では)不良少年のことを「ヤンキー」と呼ぶのはあまり一般的ではなかったはず。ヤンキーは字義通り、アメリカ人の俗称という意味の方が強かった。

(八十年代はまだ、ヤンキーではなく、「ツッパリ」と呼ばれていた。近藤真彦『ハイティーンブギ』では、《おまえが望むなら、ツッパリもやめていいぜ》と歌われるし、横浜銀蝿は『ツッパリ High School Rock'n Rol』だ。)

(ウィキペディアには、《関西で使われていた「ヤンキー」という呼称は、1983年に嘉門達夫が「ヤンキーの兄ちゃんのうた」の自主制作盤200枚を全国の有線局へ配って放送したところ全国的に広まり、その年の日本有線大賞と全日本有線放送大賞で新人賞を同時受賞し、定着した》と書かれているので、八十年代後半---85年から88年---につくられた映画版「ビーバップ」の頃には、関東でもすでに「ヤンキー」は定着していたことになる。とはいえ、ぼくの感覚からすると、「ビーバップ」と「ヤンキー」という語は、感じとしてどうしても結びつかない。「ビーバップ」はあくまで「ツッパリ」がしっくりくる感じ。)

(八十年代にはまだ、「ヤンキー」という語に、大阪の不良、大阪風の不良、という、語の出自からくるニュアンスが強く残っていたのかもしれない。)

別にマウントをとりたいわけではなく、思いがけない「解釈」をみて、感心したと同時に、あの頃からこんなにも時間が経ってしまったのだなあと、しみじみしたので、なんとなくこういうことを言いたくなった。