●たまに特に何ということもなくネットの動画をだらだら観て一日が過ぎてしまうことがある。後から考えると、何を観たのかさえよく憶えていないのに、時間が経ってしまっている。そうこうしていて、(どういう繋がりか憶えていないが)『俺たちは天使だ!』の動画にたどり着いた。小学校六年生の時、ぼくはこのドラマが大好きだった。しかし、当時はビデオもまだなかったので(音だけカセットテープに録音したりはした)、当時の放送で観て以来だから、三十六年ぶりに観られたのだった。たぶん、違法アップロードだと思うので、そのうち消える。
『俺たちは天使だ!』第一話「運が悪けりゃ死ぬだけさ」
http://www.pideo.net/video/pandora/8424c29fcd2380a0/
ずっと、東映セントラル(セントラル・アーツ)系の作品だと思い込んでいたけど、東宝の製作だったことを知る。ぼくのなかでは、『探偵物語』『俺たちは天使だ!』『プロハンター』という三つのドラマは、八十年代のはじまりの幸福な雰囲気と分かちがたく結びついており、おそらく何かしらの決定的な影響を受けた(「探偵物語」と「プロハンター」は東映セントラル系の作品、この流れが後に「ビー・バップ・ハイスクール」に繋がってゆく)。だが、『探偵物語』の松田優作はまだ七十年代的な「重み」を抱えているのだけど、『俺たちは天使だ!』の沖雅也と柴田恭兵、『プロハンター』の藤竜也と草刈正雄にあるのは八十年代初期(バブル前夜)に特有の「軽さ」で、思春期に入りつつあるぼくにとって、この「軽さ」が、自分の前に広がっている「新しい世界」と重なった解放感として感じられていた。同系統のドラマでも『あぶない刑事』になってしまうと、もう八十年代半ばのバブル期になるので、バブル前夜的な軽さと幸福感はなくなってしまう。
(八十年代の前半と後半とは、ぼくにとってまったく違う価値をもっていて、前半に「希望」だと感じたものの多くが、「嘘だった」のではないかという疑念に変わってしまうのが後半――要するにバブル期――だ。)
ぼくがリアルタイムで観ていた記憶だと、『探偵物語』『俺たちは天使だ!』『プロハンター』という順番だと思ったのだが、ウィキペディアで調べると、『俺たちは天使だ!』の放送が79年4月から11月、『探偵物語』が79年9月から80年4月、『プロハンター』81年4月から9月という順番だった。「俺たち…」の方が「探偵…」より早かったのか!)
今、改めて観ても面白く、演出もかなりユニークで良いのではないかと思うのだけど、第一話の演出をした――そして最も多くの回を演出している――木下亮という人は、映画監督としてはあまりパッとした仕事はなかったようだ。だが、当時のぼくにとって、柴田恭兵の「あの感じ」というのは衝撃的だったし、麻生探偵事務所のメンバーたちのあの「軽さ」というのもすごく新しく感じられた。なにしろ『太陽にほえろ』とか『Gメン75』とかの時代だったのだから(三作とも、警察ではなく「探偵」が主人公というのも新しい感じだった。)。
『プロハンター』はエンディングのみがYouTubeにあった。藤竜也はこの時四十歳くらい。藤竜也以前にはおそらく、このような「軽み」をもった中年男性は日本には存在しなかったのではないか。
https://www.youtube.com/watch?v=OQjCZReJmAo