トムと紫陽花

アトリエへ向かう途中にある中学の校門の脇に、まるでそこだけ周囲から切り離された別の世界であるかのように涼し気に青紫の花を咲かせている紫陽花も、さすがにもうその色に少しだけ疲労が感じられるようになって、花びらの緊密だった配列もややバラけ気味で、少ししんなりしてきた。(それでもまだ、花はかなりしっかりと咲いているのだった。7/11と7/16の日記参照のこと。)すぐ近くに水が流れ、横に大きく拡がる枝と豊かに濃い緑色の葉で影になった、石段を登ったやや高い場所にある、その校門の脇の僅かだけある涼し気な空間にも、じっとりと湿った、ムッとする空気は流れ込んでいるのだった。

アトリエの隣のアホ犬は、相変わらずバテバテで元気がなさそうだったが、夕方にオバさんと散歩へ行けるくらいには回復しているらしい。坂道で犬を連れた隣のオバさんに出会った。「こんばんわ」「ああ、お兄ちゃん、暑いねえ」「ホントに暑いッスねえ」アトリエの前で隣のオジさんと会った。「ああ、お兄ちゃん、毎日暑いねえ」「こんばんわ、暑いッスねえ、ホントに」まったく馬鹿みたいに芸のないどうでもいいような挨拶に過ぎないのだけど、こんな暑さのなかにいて、他に何か言うべきことがあるだろうか。