夢をみた

●夢をみた。オペラシティとかガーデンプレイスとか、あんな感じの場所で、何か用事を済ませて帰ろうとしている時、ぼくのことを知っているらしい中年の男性から声をかけられ、挨拶された。どこかで見覚えがあるような気がするけど、誰だったっけ、と思いながら、失礼にならないように、なんとなく調子をあわせて受け答えする。その男性は、「ここのギャラリーでやっている○○(上手く聴き取れない)展を観にいらしたんでしょう」と言うのだが、ぼくはこの施設にギャラリーがあることを知らなかった。でも、そう言われてみれば、随分前に知り合いの展覧会を観るために、ここに来たような気もしてくる。「こんなところにギャラリーがあるのですか」とぼくが言うと、「えっ、ご存知ない、私はこれから行こうと思っていたので、よろしければご一緒しませんか」と男は言う。この男が誰だったのかはまだ思い出せていなくて、相手が誰だか分からないのに、分かっているフリをして受け答えするのは気を使って疲れるのだけど、結局、男について行くことになる。「○○(何度聞いてもこの名前を構成する音が像を結ばない)という作家はご存知でしょう。なかなか面白い作品をつくりますよねえ」と男は話す。ぼくたちは、エスカレーターで地下に降り、いくつもの角を曲がって歩く。突然、広々としたホールのような場所に出て、そのホールの隅に円形の壁に囲まれた小さなスペースがあり、そこがギャラリーになっていた。その空間を見て、以前ここに友人の展覧会を観に来たことがあったのを、はっきりと思い出した。○○(会場にはその作家の名前が記された紙も貼ってあるし、その作家の画集も、ギャラリーの脇の小さなショップで販売されているのだが、その作家の名前を「読もう」とすると、文字は見えるのに、その像が結ばず、読めない)の作品は、円形の壁に、渋い色の和紙を手で千切ったものが直接貼付けてあり、やや地味すぎるきらいはあるものの、その複雑な構成、和紙を貼り重ねてつくった触感、色彩の選択などが、ぼくの趣味にとても合ったものだった。作品を観ている時、男性は「入試」の話をぼくに話しかけてきた。ぼくは、きっとその男性が大学の先生で、自分が勤務している大学の試験の話をしているのだと思って適当に調子を合わせていたら、その男の子供の入試が上手くいってほっとした、というような話だった。ふと、そのギャラリーのスペース全体がゆっくりと回転していることに気付いた。気付いたとたんに、足下がふらついて、作品に手をついてしまい、ギャラリーの女性から嫌な顔をされた。