『時効警察』

●『時効警察』の三話と四話をDVDで観た。なぜいきなり三話、四話なのかというと、一話、二話が収録されたDVDの一本目が全てレンタル中だったから。
ある時期、ぼくが観る日本映画に、かなり高い頻度で麻生久美子が出演していた。そして、麻生久美子という女優の魅力は、あちこちでしっょちゅう見かけるにも関わらず、その印象を明確には掴めないということで、つまり、その顔を見ればそれだと分かるのだが、麻生久美子の顔を思い出せ、と言われても、なかなか思い出せない、というような。そのような、簡単には尻尾を掴ませない、掴みどころのなさこそが、面白いのだと思っていた。しかし、何の映画か忘れてしまったが、ある映画のDVDについていた特典映像で彼女のインタビューがあって、それは映画で見る、簡単には輪郭を掴ませないような感じとは全く違っていて、外見も話し方も(そして「声」も)、むしろしゃきしゃきとエッジがはっきりとしていて、明確な印象的輪郭をすぱっとたちあげるような、竹を割ったような感じだった。この人は「素」はこういう人なのか、と思ったのだった。そして『時効警察』に出ている麻生久美子は、そのインタビューで見た麻生久美子にとても近い感じだ。そして、何故いままで誰も、麻生久美子をこのような使い方で使わなかったのだろうか、というくらい、この作品の麻生久美子は素晴らしいと感じたのだった。
●作品としては特別に面白いものではない。様々なくせ者の俳優が沢山出ていて、その魅力で持っているような感じ。三話は岩松了が、四話は園子温が、監督だけでなく脚本も担当していて、ただ、監督だけをやるよりも、それぞれの特徴が出ているのではないかと思う。岩松了は、細かいところで面白いことを沢山やっているのだけど、それが「映画」としてはいまひとつ決まっていないのと、その細かい、面白いところと、話の本線とが上手く絡んでいないのとで、作品としてはいまひとつな印象だった。(話の本線が面白くないのだ。それにしても、黒沢清の楳図短編のときも思ったのだが、何故、緒川たまきは、いつもあんな役にしか使われないのか。もうちょっと面白い使い方があるのではないだろうか。)逆に、園子温は、たいして面白い事はやっていないのだが、「映画」として器用にまとめていて、普通にぼーっと見ている分には、割合楽しめるようにつくられていた。(
●余談だけど、豊原功輔の演技は、益々、小林稔侍に近づいている。柳ユーレイは、つまらない俳優になってしまった感じだ。