●友人の展覧会の展示を手伝う約束をしていたのだが、時間を勘違いしていて、ギャラリーに着いたら既に展示は完了していて、作家も帰った後だった。携帯が壊れたせいで、直前に来たはずの確認の電話も受けられなかったのだ。すぐに謝罪の電話をしたかったが携帯は壊れているから、帰ってからにするしかない。
ギャラリーに行く途中で、銀座の歩行者天国が終わる瞬間に突き当たった。マヤ文明がどうだとか予言がどうだとか地球はいつ滅亡するのかという話をしている小学生男子の三人組が、ぼくの後ろからやってきて追い越して行った。最近でも男の子はやはりこういう話が好きなんだなあと思って彼らの後ろ姿を見ながら歩いていた。その先には大きな茶色い犬を連れた人がいた。すると、車道上を歩いていた人がすーっと減ってゆき、犬とそれを連れた人が残される感じになった。その時点では特に何も思わなかったのだが、京橋方向から車が一台、ゆっくりとした速度で侵入してくるのが見えて、あれっ、と思う。つづいて、タクシーが二台、同様のゆっくりした速さで入ってきた。まだ、路上にはパラパラとは人が残っている。ぼくもまだ路上にいる。そこで、あっ、と気付いて時計を見ると午後五時一分だった。時計から目を外すと、もう路上に人はいない。犬もいない。ぼくも近くのガードレールをまたいで歩道に入った。脇道からも一台、車が入ってくる。京橋に近い三丁目あたりにいたので、新橋方向からくる車線にはまだ車は見えない。そこではじめて、予想外に低い音量の、歩行者天国は終了しました、歩行者は歩道に上がってください、というアナウンスが聞こえてきた。すべてがとても静かで穏やかでスムースに進み、まるで潮が引いてゆくようで自然の出来事のようだった。
全く役立たずだったのにギャラリーでお茶を一杯いただいて外に出た。暮れてゆくなか新富町から東京駅までぼーっと歩いた。
夜、まるでバチが当たったみたいに花粉症の症状がいきなり来た。眠っていて、呼吸が困難で苦しくて目覚めた。鼻が詰まって息が出来ない。起き上がって口で必死に呼吸する。口で何度も深呼吸する。しばらくすると鼻づまりはかなり改善したのだが、かわって、ハナミズがずっと流れっぱなしになった。
携帯は、一度オフにしてから再起動させたら状態が少し改善した。短い時間の通話はできるが、一分くらいで自然に切れてしまう。