東京都現代美術館の常設展が、とても面白かった。やっぱ美術って面白いんだな、と思った。
(二つの企画展と常設展のすべてを観られるセット券を買ったのに、常設展を観ているうちに閉館時間になってしまった。最初に常設展を観るということは、そもそも常設目当てで行ったということなのだから、まあいいのだけど。)
(美術館にはいろんな作家のいろんな作品があるので、そのそれぞれに対してそれぞれに異なる、それを受け入れる「こちら側の体勢」を探りながら観ることになる。作品を観るのに時間がかかるのは、じっくりと観ているからというより、その作品と自分とが触れ得る一番いいポイントやいい体勢を探る――チャンネルを合わせる――のに時間がかかるからだと思う。そもそもそれ以前に「探るための体勢」をつくるのに、美術館に入ってから展示空間を軽く一周するくらいの時間がかかる。たくさんの作品が一挙にある空間にとりあえず体を慣れさせて、あわてるな、一つ一つ丁寧に行け、と自分に言い聞かせる柔軟体操のような時間だ。だから、順路通りに一周して終わり、という見方はあまり上手いやり方とは思えない。
そして、ある作品に対してそこに触れるポイントやとるべき体勢を見つけることができれば、その時点で、ある程度、自分なりには、その作品を理解できたと言えるのだと思う。それが上手くいけば、作品の前から離れたとしても、自分のなかで作品は作動し続けるだろう。それぞれの作品に対していちいちそれをするのはめんどくさいしかなり疲れることではある。そしてまた、そのようにして探っても、触れられるポイントが見つからない作品も当然たくさんある。まあ、今日のところはそれはそれで仕方がないということになる。
とはいえ、そんな風にして、ほとんど上の空のような感じで美術館の展示空間をうろうろ徘徊するする時間は、とても刺激的で、贅沢なものだ。)
(そのように思わせてくれる展示に出会えるのは、幸運なことだ。)
●これだけのクオリティの「常設展」をやっている美術館のある東京という都市は、文化的にみて、そんなに悪いところではないと思う。