●今日の日記はほぼ人から聞いた話の受け売りで、自分の考えは最後の括弧内くらいだと言える(忘れないためのメモ)。
レム睡眠中に、脳に25ヘルツか40ヘルツの電気を流してやると、七十パーセント以上の確率で明晰夢が見られるという研究がある、と聞いた。脳の振動がこの周波数で同期することを促すために電流を流すのだから、脳がこの周波数で同期している時に明晰夢が生じるのだということが分かった、ということになるという。だいたい、20ヘルツから50ヘルツくらいの帯域で振動する時に明晰夢が見られるのではないかということは分かっていたのだけど、今回、25ヘルツと40ヘルツという特定の周波数で、はっきりと他とは違う強い結果が出たということが画期的であるらしい。これは「Physical Review Letters」というかなり権威のある学術誌につい最近(今月とか先月とか)掲載された論文に書かれていたことだそうだ。
明晰夢の定義としては、(1)夢であるという自覚がある、(2)夢をコントロールできる、で、この二つのうちのどちらかが満たされていれば明晰夢だとされる。
この研究の成果は、まず第一にはPTSDの治療などに役立つと考えられているそうだが、しかし勿論それだけではなく、将来的には「自分の望みどおりの夢が見られる装置」の開発に繋がることが期待される。今後、安全に関する様々な方向からの研究が必要だろうけど(てんかんのリスクが高まるなどの点が懸念される)、原理的には、特定の周波数の電気を流すだけなのだから、その装置が実現したとして、そんなには高価なものにはならないはずだろう(8Kテレビとかよりはずっと安いのではないか)。
もしこれが実現するのならば、すべての人が、少なくとも眠っている間だけは、完全に自分の望む通りの世界で生きられることになる。高度に技術化された自己暗示や自己催眠、あるいはマスターベーションに過ぎないとも言えるけど、でも、これだけのことで人はずいぶん楽に生きられるようになるのではないかという気がする。そのかわりに、多くのエンターテイメントや宗教や芸術がすたれるのではないかと思う。とはいえ、それらが自己との関係だけではなく他との関係に関する形式――社会的関係の形式――である限り、完全にすたれることはないかもしれない。
(これは、外にいる誰か――催眠術師だったり薬物だったり大型スクリーンとスピーカーだったり作家だったり環境だったり――が催眠をコントロールするのではなく、自分自身が自分の夢をコントロールするというところが画期的である気がする。外から与えられるのはたんなる電気による振動であり、それは自己の脳内シンクロを促すだけなのだから、あとはすべて「その人の脳の内部」の問題となる。完全に閉じた自己言及ループではあるけど、そこに、自己が自己へと再帰することによって自己を書き換えてゆく、という出来事が生じるのではないか。それは、ネットワークを構成するノードはかわらなくても、ネットワークそのもの――ノード間の配置や配線――が変化する、ということなのではないだろうか。この「自己対話」には言語さえ必須ではない。
いや、でも考えてみれば、「夢」というのは明晰夢でなくても既にそういうものなのかもしれないが……。)