●夏の間はずっと外で寝ていたという夢を見た。テントや寝袋ではなく、道路と歩道に面してそこからちょっと入った敷地に、直に布団を敷いて寝ている。そこは実際に借りているアトリエの敷地だが、敷地の外の様子は現実とはちがっているようだ。夢のなかで目覚め、明け方の風景を眺めながら、そういえば夏の間はずっと外で寝ていたなあと思った。そして、そろそろ起きて布団を片づけないと、人が出てくる時間だと思いながら、もう少しこの明け方の感じのなかに留まっていたいとも思っていた。
●もう一つ、毎日、花を売りに来るおっさんの夢も憶えていた。住んでいるところに、白く薄汚れたツナギを着たおっさんが、自転車を引いて、毎日、花を売りに来るのだった。商売というより趣味でやっていることのようだ。そしてぼくは毎日、そのおっさんからすごく安い値段で(三十円とか四十円)で、そこらの川原から摘んできたみたいな、見栄えのぱっとしない、花というか、草のようなものを買っている。半分枯れかけているようでもある。そして花と一緒に、おっさんから毎日、洗剤も買っている。一回の洗濯に使用する分量の、ほんのちょっとの粉洗剤を小さな紙コップのような蓋の無い容器に入れたものを、毎日その都度買っている。だが、ぼくは毎日必ず、何かのはずみでその洗剤を容器から零してしまう。そして、ああ、また今日も零して無駄にしてしまったと自分を責めるのだ。