●今期の深夜アニメでは『ガッチャマンクラウズ インサイト』と『下ネタという概念が存在しない退屈な世界』が圧倒的に面白いと思う(『がっこうぐらし!』は、最初のインパクトがすべてという感じで、後の展開はイマイチだと思う)のだが、ここへきて、『Classroom☆Crisis』がちょっと面白くなってきた。
セカイ系とは一般に、「きみとぼく」のような近い世界と、「世界の滅亡」のような大きな問題とが、中間的な媒介抜きで短絡されている物語だと言われる。例えば「エヴァ」では、個人のトラウマや学校のクラスの出来事と、人類を滅亡の危機にさらす者との闘いという両極を、ネルフという地球防衛軍的な突飛な組織によって強引に媒介していた。だが『Classroom☆Crisis』では、「大企業とその創業家」という要素を間に入れることによって、クラスの出来事→二つの創業一族間のいざこざ(家族の問題)→大企業内の権力闘争→社会的、政治的な出来事、という異なるレイヤーによる階層構造が示され、しかも階層間の影響関係もうまいこと繋がっているかのようにみせることができている。そして、主人公のナギサは、そのすべてのレイヤーにかかわり、レイヤー間を行き来して行動する。
ここで面白いのは、単に上位のレイヤーの出来事が下位のレイヤーに影響を及ぼすという構図にはなっていないことだ。少なくとも、「創業一族間のいざこざ←→大企業内の権力闘争←→社会的、政治的な出来事」の三つの層は、どこか一つが圧倒的な力をもつのではなく、互いに対して互いが強い影響を及ぼしている(どれか一つの動きが、他の二つにも伝播する)。そして、最下位のレイヤーであり、三つの上位レイヤーの影響を一方的に受けているだけのようにみえる「クラスの出来事」の層が、どのように上位レイヤーに対して影響を押し返すことができるのか、というところがクライマックスになるのだと予想される。
(ただ、一期分の、12話もしくは13話くらいの分量だと、上記のような作品の構造を示すところで終ってしまい、その構造でどこまで展開できるのか、というところまではいけないだろうと思わる。ようやく面白さが見えてきたところで、終わる感じ。)
インサイト」「下セカ」「クラクラ」という、今期の面白いと思う作品はどれも皆、「わたし(きみとぼく)」でも「世界」でもなく、その中間にある「社会」という層のあり様を、「フィクション」としてどのように構築するかという主題の、まったく異なる三つのやり方を示しているように思われる。そしてそれらはどれも、いわゆる従来の「社会派」とは違う形を示している。
(「インサイト」では、正義や理想というほど強くはないが、「今よりは好ましい社会の状態を目指す」という社会変革への動機が登場人物にあるようにみえる。しかし「クラクラ」では、「社会という分厚い複数の層」の存在が強く示され、その前提のなかで行為することが意識されるが、重要なのは社会の変革ではなく、渦巻く「社会の力」のなかで、かけがえのない「このチーム(クラスの出来事)」をどうやって存続させるのか、が問題となる。とはいえ、そのための行為による影響は別レイヤーにも伝播するだろう。「下セカ」はその中間というか、構造はもっと複雑で、丁寧な分析が必要だろう。)