ハイパーインフレに陥っているベネズエラで、ビットコインが存在感を増している、という話。「ビットコイン」新世界のベネズエラ:自由を求める、採掘者たちの反逆(FUZE)
https://www.fuze.dj/2017/01/Venezuela_mining.html
《年率500%近いインフレの中にあるベネズエラにおいて、通貨マイニングはテクノロジー愛好家の派手な趣味や、金に物を言わせた実験ではなく、ほとんどライフラインと言えるほど重要な収入源となっている。》
ベネズエラ政府は「21世紀の社会主義」を掲げてさまざまな改革を行ってきたが、その経済は数年前から危機的状況に陥っている。食料や薬などの生活必需品も企業の生産活動に必要な物資も不足して年率481%という強烈なインフレが進み、失業率は20%に達すると予測されている。》
ベネズエラでは電気料金が政府によって価格統制されているため、通貨マイニングにかかる莫大な電力コストを著しく低く抑えることができるのだ。通貨マイニングには高性能なコンピュータが必要だが、その初期投資さえクリアできれば、運営コストをほとんどかけずに収入が得られるというわけだ(しかし、頻繁に起こる停電には気をつける必要がある)。》
《(…)ベネズエラの通貨マイナーたちは、入手した通貨を何らかの方法でドルに替え、それを使って外国から物資を購入している。たとえばreasonが取材した、アルベルトという男性は、デジタル通貨が使えるWebサイト「eGifter」でAmazonギフトカードを購入し、それでアメリカのAmazon Prime Pantryで食料品を注文している。》
《一方リカルドと名乗る男性は、慢性の持病を持つ母親のため、ベネズエラで手に入らない医薬品を国外からビットコインで購入している。彼のビットコイン収入は月500ドル(約6万円弱)程度だが、その有無は彼らにとって文字通り死活問題である。リカルドは「ビットコインは今、私たちが生き延びるための唯一の希望なんです」と語っている。》
《だがベネズエラ政府は、通貨マイニングを政府に対する脅威と見なして取り締まり始めている。2016年3月、秘密警察のSEBIN(Servicio Bolivariano de Inteligencia Nacional)が配送代行業者でビットコインマイナーでもある31歳の男性を逮捕し、3カ月以上にわたって拘束した。通貨マイニングそのものは違法ではないので、秘密警察が主張した罪状は、コンピュータの密輸と電力の盗用だった。複数人が同様に逮捕され、それは通貨マイニングコミュニティに対する見せしめと受け取られている。》
ベネズエラ政府は1999年、マルクス主義者を自認するウゴ・チャベス前大統領が就任して以来、貧困層向けの無償医療制度の構築や農地改革などと併せ、為替レートの固定化や商品価格統制などの社会主義的政策を推し進めてきた。そこには格差の解消や貧困の撲滅という理想があったはずだが、現実には産業の衰退を招き、チャベス氏の死後は経済の混乱がさらに深まっている。政府が理想の下に管理しようとして破たんした経済を、脱政府的な思想から生まれたデジタル通貨が救っている(部分的にではあるが)と見ることもできる。》
《だが救われているのは、通貨マイニング用コンピュータを購入するほどの余裕がある中流階級以上の人間とその周辺だけである。また上に述べたように、ベネズエラ政府が通貨マイニングの取り締まりを強めているため、通貨マイナーにとってはいつかリスクがリターンを上回ってしまうかもしれない。》
ベネズエラのマイナーと実際にスカイプで会話した人の動画。「ビットコインベネズエラ ニュースじゃ教えてくれない仮想通貨の世界 Ep2」
https://www.youtube.com/watch?v=9V3v2q48lTY