●うーん、どうにも余裕がなくてユーロスペースの『やがて水に歸る』(榎戸耕史)、観に行けなかった…。そのうち、横浜辺りで上映されればいいのだけど。
https://yagatemizu.wixsite.com/home
●おそらく、的確なまとめなのだろう。「日本は「格差社会」になったのか---比較経済史にみる日本の所得格差---」(森口千晶・一橋大学 経済研究所・2017年11月21日)。
日本は、(他の先進諸国とは違って)ピケティが言うような、富裕層の極端な富裕化によって格差社会になったのではなく、《富裕層の富裕化を伴わない「低所得層の貧困化」》による格差社会に陥っている、と。つまり、高度成長時代の社会モデル(《人的資本の同質性に価値を置き、「男性正社員モデル」のもとでチームワークとハードワークによる革新を目指》す)が、温存されたままで機能不全になっているため(お金持ちのお金は増えずに、そのモデルから零れ落ちる貧乏人ばかりがどんどん増えていて)、全体として貧乏な国になっている、ということになる。
下のリンクはPDF。
日本は「格差社会」になったのか---比較経済史にみる日本の所得格差---
《すなわち、(高度成長期に成立した)日本型平等主義は、北欧型福祉国家の平等主義とは対照的に、再分配前の所得における世帯を単位とする平等であり、企業による正社員への人的資本投資と雇用保障、男性正社員を世帯主とする標準世帯、夫婦による性別役割分業、および非稼得者の親族による私的扶養、を前提として成立するものだった。また、日本型平等社会は日本型の企業システムおよび社会保障制度と優れて補完的な関係にあり、大企業による男性正社員への手厚い教育訓練は均質性の高い労働力を生み、市場所得における平等を実現する一方で、政府の再分配政策は企業を通じた雇用保障と社会保険に重点を置き、事後的な貧困救済は自助努力と私的扶助を基礎とする限定的な制度に留まったのである。》
《しかし、1980 年代以降の少子高齢化と世帯構造の多様化、さらに 1990 年代以降の長期不況は、日本型平等社会の前提条件を大きく揺るがし、既存の制度には包摂されない社会の構成員(すなわち高齢単独世帯、母子世帯、非正規世帯、無業世帯)が増大し、相対的貧困率が上昇した。近年の日本における格差拡大の特徴は、富裕層の富裕化を伴わない「低所得層の貧困化」にあり、ピケティの強調する世界的趨勢とは一線を画している。換言すれば、日本は規制緩和構造改革によって、公正よりも効率を重視し格差を積極的に容認する「アメリカ型格差社会」になったのではなく、むしろ既存のシステムが機能不全に陥ったことによって日本型平等主義に内在していた格差が顕在化し、結果的に格差の広がった社会になったといえる。》
《日本が直面する真の課題は貧困化と革新力の低迷にある。》