2019-06-21

●驚いた。というか、どういうこと? 

「量子重力には対称性はない大栗機構長らが証明」(Kavli IPMU

https://www.ipmu.jp/ja/20190619-symmetry

素粒子論の重要な原理であった対称性がすべて破れてしまう》と書かれているが「すべて」って…(グローバル対称性だけでなく?)。このプレスの文章をそのまま素直に読んでしまうと、とんでもないことのように思われるのだけど、どういうことなのか。よく分かっている人に説明してほしい。いや、聴いても分からないか…。

全然かみ砕けていないが、メモとしておいておく。

東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)  大栗博司 (おぐりひろし) 機構長は、マサチューセッツ工科大学物理学教室の Daniel Harlow 助教と共同で、重力と量子力学を統一する理論では、 素粒子論の重要な原理であった対称性がすべて破れてしまうことを、ホログラフィー原理を用いて証明しました。この証明にあたっては、量子コンピューターで失われた情報を回復する鍵とされる「量子誤り訂正符号」とホログラフィー原理との間に近年発見された関係性を用いるという新たな手法が用いられました。》

《宇宙が始まった当初、「電磁気力」「強い力」「弱い力」「重力」の4つの力が全て統一されていたと考えられています。ミクロの世界を記述する量子力学を基礎とした理論を用いて、「電磁気力」「強い力」「弱い力」の3つの力については統一的に説明できますが、重力を含めた4つの力も含め統一的に説明する理論については未だ研究途上の重要な課題であり、様々な面から研究がなされています。》

ホログラフィー原理とは、量子力学の記述するミクロな世界での重力の振る舞いを、重力を含まない量子力学の問題として説明することを可能とする理論です。中でも、1997年にプリンストン高等研究所のファン・マルダセナ (Juan Maldacena) 氏が発表した AdS/CFT 対応はホログラフィー原理を数学的に厳密に定義した代表的なものとして知られています。》

《大栗機構長らは、今回の証明にあたって、この AdS/CFT 対応と「量子誤り訂正符号」との間に近年発見された関係性を用いるという新たな手法を用いました。「量子誤り訂正符号」とは、量子コンピューターで失われた情報を回復する鍵とされるものです。》

《本研究に関して大栗機構長は「対称性は自然の基本的な概念であると一般的に考えられてきました。そして、多くの物理学者は、自然界には美しい一連の法則性が存在しなければならないと考えており、美しさを定量化する1つの方法は対称性であると考えています。しかし、今回私達は、量子力学と重力が統一されている最も基本的なレベルの自然の法則では、対称性が保たれないことを明らかにしました。つまり、物理学者達が抱いてきた対称性に対する信念が間違っていることを示したのです」と述べています。》

●大栗さんコロキウム。《大栗さんのセミナーで聞いてきた話を共有します。想像で補完しているので一部聞き間違ってるかもしれません。》これは難しすぎる…。

https://docs.google.com/document/d/1-7y3F3jyjvYpgk9AxvCfIiVkgtBwx1TkV6duv19tmmI/edit

●論文のアブストラクトの訳。「とね日記」より。

https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/f3873800958a91cedc050075c14d303c

 

ホログラフィーによる対称性の制約

Daniel Harlow and Hirosi Ooguri

Phys. Rev. Lett. 122, 191601 - Published 17 May 2019

この論文ではAdS/CFT対応の理論における量子重力において、従来から考えられている一組の推測(が正しいこと)を示す。推測されているのは、大域的な対称性(グローバル対称性)は成り立たないこと、内部ゲージ対称性はすべての既約表現から変換される動的な対象から導かれなければならないこと、そして内部ゲージ群はコンパクトでなければならないことである。これらの推測の真実性に関して大方の見通しでは明らかではなく、AdS/CFT対応の非摂動的な一貫性から得られる結果からは自明ではない。この議論に関しての背景と詳細は、付随する論文で紹介する。

対称性については、従来から [1-3]で示される一組の推測的な制約が考えられている。(i) 量子重力は大域的な対称性を許していない。(ii) 量子重力では、いかなる内部ゲージ対称性もすべての既約表現から変換される動的な対象から導かれなければならない。(iii) 量子重力では、いかなる内部ゲージ対称性群もコンパクトでなければならない。

これらの推測のどれも古典的なラグランジアンによって正しいとは証明されていない。例えば、アインシュタインの重力に結合する自由零質量スカラー場では推測(i)(iii)が満たされない。そしてアインシュタインの重力に結合する純粋なマックスウェル理論のゲージ不変性は推測(ii)を満たしていない。それはこれらの推測のどれもが、非摂動的な量子重力の特性に依存しているからである。これらの推測の「古典的な」議論はブラックホールの物理学に基礎を置いている。しかし、ここにはいくつもの抜け穴がある。例えば、(i)に関してこれまで議論されてこなかったことのひとつに、λφ^4 理論における φ'= -φ 対称性のような離散的大域対称性を排除するということがあげられる。そして推測の(ii)では、ある種の短距離での物理学の仮定が必要になる。(この議論の詳細は[4]を参照)

この論文のゴールはAdS/CFT対応の力を使って、少なくともこの対応の範囲内で、量子重力理論の最良の理解を得ることであり、これらの推測(が正しいこと)を確立することである。そして、その過程で理論物理学で最も基礎的な概念である大域的な対称性とゲージ対称性が本当は何を意味しているのかを明らかにすることである。この論文では[4]で紹介されている詳細を大きく省いている。また、簡潔にするために、時空座標でありふれた動きをする内部対称性のみを取り上げた。これは高い形式での対称性と同様、[4]で再び議論されている時空対称性についても言える。

VECTIONメンバーでもある、ヴァーチャルユーチューバーもやによる『大栗先生超弦理論入門』(大栗博司)を読む動画。一日目「素粒子論のなにが問題なのか?」。この動画シリーズはこの後もつづいている。

https://twitter.com/moya_Virtual/status/1140620110308265989