2019-09-07

U-NEXTで、大島渚天草四郎時貞』を観る。大島渚東映で時代劇をつくる。主演は大川橋蔵。普通に考えればかなり悪い食い合わせのように感じられる。しかし、『太陽の墓場』(1960年)『日本の夜と霧』(1960年)『飼育』(1961年)『天草四郎時貞』(1962年)という初期大島の展開には、内容的にも、形式的にも、連続性と必然性が認められ、大島渚という作家の(あるいは才能の)強い一貫性を感じることができる。

(とはいえ、東映時代劇という枠組み、時代劇スター---大川橋蔵---という存在と、大島渚の映画との間には、どうしてもかみ合わない、ギクシャクした感じがあることは否定できないと思う。)

おそらくこの映画は、大島渚の全作品のなかでも、もっとも予算が豊かに使えた作品のうちの一つなのではないかと推測される。そのことが、演出や場面の作り方にもある程度反映されているように思う。つまりこの映画からは、大島渚がもし、松竹と喧嘩することなく、スタジオシステムの内部に留まって(比較的裕福な予算と人材で)映画をつくりつづけたとしたら、その才能はどのような方向へ展開していったのだろうかという、実際にはそうではなかったがありえたかもしれない、もう一人の別の大島渚の存在の可能性を匂わせる映画でもあるように思われた。