2019-12-29

●映画を観られるようになるためのリハビリ。要するに、絶対に自分が好きに決まっているという映画を観ることで、疎遠となってしまった「映画を観る」という行為と自分とを近づけ、徐々に親しくさせていこうとしている。

赤ちゃん教育』(ハワード・ホークス)をU-NEXTで。十代の時に決定的な経験として刻みつけられてしまった映画が、相米慎二『ションベンライダー』とホークスの『赤ちゃん教育』だった。もう一つ付け加えるなら、鈴木清順ツィゴイネルワイゼン』。この三本は、五十回以上は観ているはず。

ぼくにとって「芸術」とは、抽象的な変換作用によって、現実的な時空(三+一次元)を超えた運動や変化を生じさせること、あるいはそれを捉えること、あるいはそれになること、なのだと思う。十九歳くらいでこの映画をはじめてVHSで観た時、あまりの衝撃に、そのまま連続して朝まで何度もリピートして観て、一体これは何で、ここでは何が起こっているのかと、途方に暮れたという記憶がある(一睡もせずにそのまま予備校に行って、デッサンを描く気にもならずぼんやりしていたと思う)。この時、ふいに「芸術」に触れてしまったのだと思う。

勿論、今観て、当時受けたショックと同等のものを受けるということはないのだが、その代わり、当時はただただ圧倒されていたが、今ではその時には見えなかった細かいニュアンスや複雑な構造を、前よりは細かく感受することができる。当時の自分が、この映画にあんなに魅了されたのかということに納得できる。