2021-08-26

●『ペドロ・パラモ』を読んだ。これを読むのもずいぶんと久しぶりだ。

●「読書メーター」って、けっこういいものなのだなあと思った。ゼロ年代当初くらいにあった、いい感じのテキストサイトの香りがいまもなお生き残っているというのか。浅すぎないが、深すぎもしない。ガチすぎないが、ユルすぎるわけでもない。感想とレビューの中間くらいの感じ。本をちゃんと読んだ上で、気軽に感想を言い合ったり、薦めたりしている。アマゾンレビューとかによくある、妙にイキッたような感じがあまりないのもよい。

「ペドロ・パラモ」感想・レビュー-読書メーター

https://bookmeter.com/books/407536

●映画化された『ペドロ・パラモ』がYouTubeで観られる。自動翻訳の日本語字幕で、ザッピング的にとばし観しただけだが、この小説の最大の特徴である、断片性と、その断片を語る多数の声の主(話者)たちがすべて死んでいること(多数の幽霊たちの行き場のない嘆きの声が縒り集められて編まれていること)を反映させるような映画的な工夫は特になくて、物語をべたっと撮っているような感じだ。唯一、生きている話者だと思われたフアン・プレシアドもまた、実は死んでいたのだと分かる場面や、それに続くフアン・プレシアドとドロテアが棺桶の中から語り続ける場面、そこに至るきっかけとなる近親愛的な関係にある兄妹の場面は割愛されているようだ。ただ、物語の舞台となった当時のメキシコの感じがビジュアルとして観られるのはよい。

Pedro Paramo (1967) Full Movie

https://www.youtube.com/watch?v=-9j45h78JeI

●『ペドロ・パラモ』朗読(スペイン語)。

Pedro Páramo - Juan Rulfo |AUDIOLIBRO COMPLETO| "El Hijo que Reclama el Lugar de su Padre"

https://www.youtube.com/watch?v=hBrzT2JpYPE

●『ペドロ・パラモ』は1955年に出版された。この年と現在との距離感はどんな感じなのかと調べてみたら、ガルシア=マルケスが最初の本(『落葉』)を出版し、カール・ドライヤーの『奇跡』やチャールズ・ロートンの『狩人の夜』が製作された年で、日本では成瀬巳喜男が『浮雲』を撮り、石原慎太郎が『太陽の季節』で芥川賞を受賞している(小津の『東京物語』が53年で、三島の『金閣寺』が56年だ)。

(エリア・カザンの『エデンの東』、ニコラス・レイの『理由亡き反抗』もこの年で、ジェームズ・ディーンの没年でもある。)