2021-12-25

アマゾンプライムでたまたま見つけた、私立恵比寿中学(シアターシュリンプ)の2015年の演劇作品『エクストラショットノンホイップキャラメルプディングマキアート』を観た(ああ、松野莉奈が出ているなあ、と思いながら)。これが思いの外良かった。

シベリア少女鉄道(名前は聞いたことがあるが観たことはない)の土屋亮一という人が脚本と演出をしている。脚本から、舞台装置や空間の使い方まで含めて、構造的に精密機械のようのきっちり組まれたコメディで、かなり素晴らしいのだけど、ただ、普通にやると「作者による操作感」がちょっと気になって息苦しくなる感じかもしれないところもあるが、アイドルが演じていることで、それがいい感じに緩んでいると思った。

セリフが、いわゆる素人演劇的な感じの発声で、最初はちょっと「うーん」とも思ったのだが、エビ中のメンバーたちは、俳優としての技術がそれほど高くないため、きっぱりと割り切った分かりやすい演技に徹していて、それがすごく良い方向に転んでいるようにみえた(そっちに振り切った演出が良いのだと思う)。配役=キャラ配置もよく、特に、状況に最も翻弄される人物といえる小林歌穂の、わかりやすさに徹したために表現主義的とも言えるような感じになっている「引き裂かれる感じ」の演技とか、ユニークで面白かった。分かりやすい演技に振り切っても、コントっぽくならないのは、「あまり上手くない(こなれ過ぎていない)」ということがいい方向に出ているのだと思う。そして、演技自体はややルーズでも、切れの良いリズムや間の良さなどがキープされているので終始きびきびとしていて、それは演出が優秀であるからなのだろうと思った。

アイドルというのは、主体であるというより、ひとつの特異な媒体であり支持体であると思う。音楽でも、アーティストが提供するアイドル仕事の、オリジナルとは別の独特の面白さがあるが、演劇でも、先鋭的な作家や演出家のアイドル仕事がもっとあってもいいのではないかと思った(知らないだけで既に多くあるのかもしれないが、あるとしたらもっと観たい)。曲を一曲つくるよりも、演劇を一本つくる方がおそらくお金がかかると思われるので、エビ中くらいの規模で売れているアイドルでないと難しいのかもしれないのだけど。