2023/01/06

●最近の検索エンジンへの不満は、文字通り、そのままを検索してくれないことがある、というところにある。

Googleにしても、打ち込んだ文字をそのまま検索して欲しいのに、勝手に意味を解釈してしまう場合がある。例えば、岡﨑乾二郎の『回想のヴィトゲンシュタイン』という8ミリ映画作品に、「なぜ海岸はいつも、海の近くにあるのか」という、分析哲学的ジョークのような言葉が出てくる。この文言を検索すると、《もしかして:なぜ海外はいつも、海の近くにあるのか》なのでは?、とサジェストされ、上位には「松はなぜ海の近くに生えているのか」「なぜ砂浜海岸は日本海側に多いのでしょう」「海にはどうして波があるの、波はどうやってできるの|自然」という検索結果が並び、どこまで見ていっても、文字通り、そのままの文言を含む結果が出てこない。検索でヒットしないということは、そのように書かれたWebページが存在しないということではないか、と言われるかもしれないが、ぼく自身が、『回想のヴィトゲンシュタイン』について書いたこの日記に「なぜ海岸はいつも、海の近くにあるのか」と書き込んでいる。なのに、検索でそこにたどり着けない。

「なぜ海岸はいつも、海の近くにあるのか」という、いかにも分析哲学っぽいギャグ(言葉)は、港にぽつんと座っている、(「心」のない、かぶり物の)ヴィトゲンシュタインくん」の物悲しい表情(無表情)の映像とセットになることで、はじめて強く印象づけられる。この2つのものの間(落差)にある、みえない過剰こそが、問題とされている。

furuyatoshihiro.hatenablog.com

意味を解釈してサジェストするというのは素晴らしい機能だと思うが、検索結果は、まずは文字通りのものを探して上位に示して、解釈したものはその次に出てくるようにしてくれないかなあ、と思う。言葉にとって「意味」が全てではないのだから、「一見、無意味であるように見える」とか「常識的には意味が通らない」からと言って黙殺しないで欲しい(というかそもそも、サジェストされた「なぜ海外はいつも、海の近くにあるのか」という文言も意味が通っていないではないか)。

(文字通り、そのまま律儀な検索をするよりも、徴候を読み取って鋭く意味を解釈する「直感的」な検索の方が技術的にずっと高度だということは分かっているし、それができるようになったことがどれだけ驚くべきことなのかということも、ある程度は分かっているつもりだけど、文字通りの検索の方もちゃんと残しておいてほしい、と。)

追記。この件について、「“ ”」で括って検索すると、文字通りの検索結果が出ると教えていただきました。

●左右に人がいる状態で話をしていて、右の人の声はちゃんと聞こえるのに、左側の人の話がどうしても聞き取れなくて、いつの間にこんなにも耳が遠くなってしまったのかと愕然とするという夢を見たのだが、目覚めてみると、右の耳にだけイヤホンを入れてYouTubeの動画の音を聞きながら、うとうと寝落ちしていたのだった。